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水着をしたためたい




 「人里へと赴きたい」


 そう考えた時、あの白い砂浜から推測出来るルートは2つ有った。

 1つ目は、水平線の向こうにちょこんと見える白い家々。そこに向かって泳ぎ続けるというルート。

 もう1つは、此れ見よがしにある坂を登ってみるというルート。

 正直言って、考えるまでも無い。より確りとした認識を得る為にも、一度坂を登る方が現実的には良いに決まってる。

 でも、僕は泳ぎに来ているんだ。

 なら、あの浮かび来る白亜に向かって、この青い気持ちを胸に気炎万丈泳ぐのは、至極当然の事柄なのだ……。



 コポこぽコポこぽりこぽり……ズリュン!ずりゅずりゅ……


 かれこれ10分ほど潜水泳をしているが、Lv.2〜Lv.5の【ジョーフィッシュ】なるダルマザメじみた顎をした、赤と青を足した丸っこいモンガラカワハギの様なエネミーが()くそのギロチンの如き顎で噛み付きに来る。その一撃は、1回毎に3〜7ダメージ程であり、現状全く無視出来ない火力で有るが、HPあるいはVITが低いらしく、1回〜3回当てられれば討伐可能で、時折〈CATCH〉という「対象に甚大なダメージを(もたら)した時、または拘束出来た時、その攻撃をした武器がその対象に強く留まろとする力が働き、それによる対象への継続ダメージや、引き抜く事など大きなダメージを与える事ができる」機能が発生したりして、そのサイケデリックな模様と早くは無いスピードにより、初めの14ダメージ以降は無傷で切り抜けられていた。


 そうして岸壁近くを伝いながら街影へと泳いでいれば、不意に尻尾と右足が突っ張った。振り返れば、岸壁から幾本もの茶色い触手が伸びており、そのうちの3本が絡まって来ていて、残りの触手もコチラへと迫って来ていた。すぐさま体を捻って梃子する様に槍を何度も払う事で拘束からの脱出と牽制が出来ているが、触手の大元である【ローパス】Lv.6のHP消費は1割以下で芳しく無い。

 ……面倒臭いな。本体全然動かないし、逃げるか?

 少しづつ距離を置きながらチラリと逃走経路を確認すると、ボコリ!という水泡音が轟き、それと同時に脹脛(ふくらはぎ)への衝撃とHPバーの短小化が発生した。

 即座に衝撃による重心変化に対応しようとする間も無く、本体に残っていた太めな2本の触手が腹へと巻き付いて視界上部に「CATCH!!」と黄色く明滅表示され、微小なダメージも発生した。

 マズイか?

 勇み足になるように咄嗟に突きを放てば、その触手の大元へと確りと突き刺さってHPを残り2割程まで削り取り、そのローパスの文字の上にもCATCH!!という文字が踊り、ジョーフィッシュへやった様にグッと力を込めて引き抜けばまたダメージが発生して、そのHPバーは消滅し[ゴツゴツ触手]というアイテムへと変わった。また、視界上部に[ミルクLv.1→ミルクLv.2][短槍Lv.1→短槍Lv.2]というポップアップが連なって表示されて、同じタイミングで視界右上に有るメールマークに赤く①と表示された。

 メールボックスを開けば[種族レベルと基礎レベルについて]という物で「種族レベルが1つ上昇する度にステータス内の対応したそれぞれの項目を1上昇させれるポイントを3つ取得でき、種族レベルが合計で10上昇すると基礎レベルが1上昇して、その基礎レベルが上昇するまでの行動から基礎ステータスの何れかが1ポイント上昇する」という内容だった。

 取得したポイントは、火力不足を感じていたからSTRへ2ポイント、より快適に泳ぐ為にAGIへ1ポイント──HP60,MP60,STR5→7,VIT3,DEX6,AGI8→9,MAG4,MND4,LUK3──と振り分けた。

 また、HPが33まで減っていたので、リスポーン時に目の前の机に1つだけ置いてあった[HP回復薬]──HPが30回復する──を使用してHPを満タンにした。


 戦後処理を終えた為また動き出したいのだが、先の戦闘の推移により沖合に離れており、また岸沿いに動くか迷ったが、岩壁に擬態しているらしき【ローパス】との接敵が億劫だったのと、結局警戒範囲は変わらないし、【ジョーフィッシュ】はそこまで遊泳速度が優れていないから、逆に前方にだけ注意が向けられる沖のままで街へと泳ぎを続ける事にした。


 そうしてチョロチョロ──遊泳速度は、四肢や尾を動かせれる速度が上がった為に上昇したから、実際にすばしっこい──泳ぎつつふと水面へ顔を覗かせれば、指を指せばその指先に街並みが隠れてしまうくらいだった街並みが、指を2本立てないと隠れないくらいの所まで進んでいて、もう一踏ん張りかと体を丸めてまた潜水すれば、左の方から小魚が幾匹か泡を立てて泳いで来ており、少し槍を伸ばせば獲れそうだったので突いてみると、案の定。【アンチョビ】というアイテムが入手出来た。インベントリから説明文を見てみれば、[一般的な美味しい魚。基本的に食用として使われる]とあった。どうも(ニシン)だったらしい。鰊といえば群だよなとまた左を見たが、残念ながらもう来る事は無かった。しかし、うねる黒い影がぼんやりと大きく成って来ており、何であろうかと身構えていると、キュイキュイという音がその群青の奥から聞こえて来た。

 大きさ的に、ほぼ間違い無くイルカだろうな……赤丸じゃ無かったら良いけど、クリック音が聞こえてる時点で赤丸だったら奇襲を貰うかもしれん。

 そう考えて、姿が見えたら即座に状態を確認できるように影を注視しながら槍を構えていれば、赤丸と【トルプンテッド】Lv.21という表記と伴に、鼻だか上唇だかが細長く尖ったカジキマグロじみた姿形をした黒っぽい体色のイルカが現れ出た。

 ……え?

 余りに奇天烈な姿と高いレベルに少し動揺するが、トルプンテッドは到底逃げられそうに無い速度で一直線に此方へ突き進んで来ており、鼻の長さが自分の短槍と概ね同じ長さに見えたから、ローパス戦での反省を早速活かそうと、斜め下へと潜り斬り抜けられるように尻尾を立てて半身に構え、そろそろ接触しそうだという時にトルプンテッドがグッと大きく頭を下げたから、今だ!と体を捻って尾を回し、槍を手元へ寄せる事で錐揉みに動き、すれ違い様にダメージを与える事ができたのだ!

 やった!

 トルプンテッドのHPバーを見れば、レベル差が有りすぎるのか3mmくらいの量しか削れていなかった。

 そうこう確認している内に、トルプンテッドはまたコチラへと突進して来ていて、また同じように頭を下げた為に錐揉み回転斬りをした。

 ……なんか全然いけそうだな。

 そうやってチマチマと1割ほどまで削ると、トルプンテッドの鼻の剣が帯電を始め、突進のスピードが上昇して頭を振り被らずに直進して来た。

 頭の動きにばかり注視していた為に反応が遅れて避け切れず、尻尾の先端へと直撃。

 CATCH!!

 見れば鼻剣が尾を貫いており、そのままトルプンテッドの遊泳に引っ張られて体が尾を起点に丸まる。しかし反って突きが届くように成ったと腕を動かすが、それと同時に鼻剣からボコボコボコ!と大きな音を立て疎らな電光と盛大な気泡を発生させて、電光が一際大きく迸った瞬間、HPが残り1割程まで消し飛び、視界が灰色に染まった。HPバーの右側を見れば、一つだけの目に(バツ)が被さっているアイコンが表示されており、間髪入れずに尾が引っ張られる感覚が消えてまた少しHPが減り、その衝撃により少し体が浮ついた。

 これは面倒くさいな……おそらく現状は頭上に水面。イルカはさっきと同じように突き抜けた方向からまた突進して来るだけだろうけど……

 焦りながらもとりあえずと、トルプンテッドが居るであろう方向へと「ウィンドショット」を放ち、すぐさま扇状に「送風」を発動させて、気泡の壁が造られた事を祈りながら、大きく退避したい気持ちをグッと抑えて体1つと少し分くらい横へ動き、遊泳音が横を通り過ぎるその須臾(しゅゆ)の間への心構えをしようとした所で視界がぼんやりと戻り始め、視界には確りと気泡の煙幕が張られている事が認められて、反ってやり難く成ってしまったのではないかと次の手を思案し自嘲していれば、突然HPが全損し、衝撃により回転するぼやけ始めた視界に映ったのは、背後であった方で鼻剣を振り回しているトルプンテッドであった。


 普通に心臓に悪い…………






 約定は果たされませんでしたね。

 今回は他の作品に係っていたのと、単純に間に合わなかったからですね。


 その割に起伏に乏しい噺でしたが……


 約定は21-1へ変更しようか迷いましたが、変わらず14-1という事にしておきます。





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