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召還された召喚師  作者: 星々導々
第一章 転生者の降臨・消滅・そして再臨
23/275

23話 異世界カルチャーショック

 指導をやり始めてから、十五日目の朝。

 いつも通り召喚師用の集会場へと向かう途中のマナヤ。召喚師たちの強い希望もあり、マナヤはまだ集会場での『討論』指導を続けていた。


(けど、一体誰がスタンピードを誘導したんだ)


 ずっと心に引っ掛かっている問題。

 何者かが、スタンピードを二手に分けさせた可能性がある。おそらく、二方向から襲って村を確実に滅ぼすために。

 だが誰が、なんのために。


(まさか、この村の奴らか? ……いや、でも)


 辺りを見回すマナヤ。

 今まで見た限りでも、この村が嫌いだという住人には会ったことがない。もちろん全員と会ったわけでも、本心を知ったわけでもないのだが。


(単に、ザック召喚師長の妄想ってだけかもしれねえんだし)


 だがそうなると、なぜ南の開拓村が無事なのか。なぜ救難信号が上がっていないのか。結局、その問題に行きつく。


「あ、あの、マナヤさん?」

「あ?」


 考え込みながら歩いていた彼に、声をかけてきた女性が。

 少しおどおどしたその少女には、覚えがある。


「あんた、たしかメロラさんとかいったか?」

「は、はい。覚えてくださってたんですね」

「まあな。ウィルも元気か?」

「はい、おかげさまで」


 かつて助けた少年ウィルの姉。

 先日の襲撃でも、マナヤが体を張って守った黒魔導師の少女だ。


「んで、今日はどうした?」


 問えば、目が泳ぐ少女。

 しかし彼女はすぐ、何か意を決したように顔を上げた。

 そっとこちらへ手を伸ばすと、マナヤの右手を取り……


「……っ、あの」


 それを、彼女自身の両手でキュッと包み込んでくる。


「!?」


 その瞬間。

 何かの光景が、頭にフラッシュする。



 ――私、テオ、の、お嫁さん……に、なりたかったん……だよ……――



 死に際のシャラの姿。

 テオの『最期の記憶』の中にあった光景だ。


「うおっ!?」


 自身の叫び声。

 直後、パシッという音と、手に伝わるかすかな衝撃。

 何かと思えば、少女もびっくりしたような表情でこちらを見つめ返してくる。


「あ、ああいや、その」


 彼女が何かしたのではない。したのは自分だ。

 自分は突然、彼女の手を振り払ってしまったらしい。言い訳しようとするも、言葉にならないマナヤ。


「う……」


 たちまち目に涙を溜めていく女性。


「え? いや、どうし」

「うぅっ……ご……ごめんなさいぃっ……!」

「は!?」


 急に泣き出し、謝罪をして逃げ出してしまった女性。


「え、いや……何?」


 その場に取り残されたマナヤは、茫然とその後ろ姿を見送ることしかできない。


「――驚いたわね」

「へ?」


 突然、背後から声。

 振り向けば、別の女性がびっくりした顔でこちらをじっと見つめていた。先ほど泣き去っていってしまったメロラという少女より、少し年上だろうか。


「マナヤさん、あなたがあの子にそこまでするなんて。ふーん」

「い、いや、何が? なんのことだ?」

「……じゃあ、わたしにもチャンスがあるのかな」


 と、こちらへと歩み寄ってくる女性。

 先ほどの少女と同じく、そっとマナヤの右手を取ってくる。


「っ!」


 ふたたび、脳裏にシャラの死に際の姿が。


「わ、わりぃ! 先急いでんだ!」

「え? あ、ちょっと――」


 女性がこちらの手を包み込もうとする前に、慌てて振り払う。

 そしてそのまま、集会所へ向かって駆けだした。


 最後にちらりと見えた、女性の表情。

 彼女もまた、酷く傷ついたような顔をしていた。



 ◆◆◆



「いや、マジで何なんだよ、一体……」


 女性を振り切ったマナヤは、ぶつくさと誰にともなく文句を。

 なぜ、急に自分の手を包み込んで来ようとするのか。そして、なぜ振り払ったくらいで泣き叫んでしまったのか。

 そして、手を振り払った時……


(なんで、シャラの顔が浮かぶんだよ)


 がしがしと頭を乱暴に掻きながら、いつもどおり集会所への道を歩く。


「あ、マナヤじゃん」

「アシュリー?」


 そこに声をかけられた。

 恐らくは剣の手入れであろう。ベンチに腰かけ、砥石のようなもので剣を磨いているアシュリーだ。


「どうしたの? ビミョーな顔して」

「……お前まで、俺の手を包み込んでくるとか無いだろうな?」


 思わず、後ずさってしまうマナヤ。

 が、とたんにアシュリーの表情が変わった。


「そういうことを、こっちからやらせるように誘導する言い方って、卑怯じゃない?」


 そう言って、なぜかジト目でマナヤの方を見てくる。


「は? 誘導? 卑怯?」

「だってそうでしょ。やるんなら自分からやりなさいよ。みっともない」


 どういうことだ。

 本気でこの世界は、一体どうなっているのだ。


「いや、その、すまん。さっき見ず知らずの女二人から急に、手を包まれちまったもんで」

「……へーえ? 自慢かなぁ?」


 とりあえず弁解してみると、アシュリーは今度はニンマリとからかうような目で見てくる。

 慌ててマナヤは首を振った。


「い、いや、自慢ってなんだよ。それに、急だったから振り払っちまったし――」

「はぁっ!?」


 瞬間。

 アシュリーが血相を変え、剣を放り出しマナヤに詰め寄ってきた。


「ちょっとあんた何やってんのよ! そこまですることないでしょ!」

「は!? いや、なんで俺が怒られんだよ!?」

「そんなにその子達のこと嫌だったの!? 可哀そうじゃない!」

「ちょ、ちょっ待て! ちょーーっと待て!」


 ようやく一つの可能性に思い至ったマナヤ。

 一旦手のひらを突き出し、アシュリーを制止する。


「つかぬ事をお聞きシマスが、〝人の手を両手で包み込む〟って、こっちの文化で何か意味があったりしますかねえ?」


 とたんに、アシュリーの表情が凍り付いた。


「……え、なにそれ、ジョーク?」

「マジだよ!!」


 真顔で訊き返され、半ギレになるマナヤ。

 するとアシュリーは驚愕の表情へと変わる。


「嘘でしょ!? じゃ、あんたの世界じゃ、みんなどうやって求婚してんのよ!?」

「きゅうこ……は? 求婚!?」


 想像の遥か斜め上の解答。思わず声が裏返ってしまう。


「いや待て、おかしいだろ! 両手を包み込む程度で求婚になんのかよ!? つーかそもそも、告白もすっ飛ばして『求婚』って何だよ!?」

「え、なにそれ、異世界ジョーク?」

「異世界マジだよ!!」


 異世界ジョーク、と訊きたいのはこちらの方だ。

 まじまじとこちらを見つめていたアシュリーは、眉を下げて頬を掻く。


「……えーとマナヤ、あんたまさか、本当に知らなかったの?」

「だから知らねえよ! なんか思い出を覗き見するみてぇだから、テオの記憶も最近は覗いてねーんだ!!」


 するとアシュリーは項垂れ、大きくため息。


「……まじかー。うん、まあ、そうね。〝相手の手を自分の両掌で包み込む〟のは、れっきとした求婚の作法よ」

「そ、そんで? そういうのを受けた時は、どうするべきだったんだ?」

「それをされて、自分も相手の手を両掌で包み込み返したら、成立。相手の片方の手だけそっと外したら、保留。相手の両方の手を外したら、お断り。そんな感じ」

「……参考までに聞くが、〝手を振り払った〟場合は?」


 一気にアシュリーの眉間にしわが寄った。


「『お前の顔なんかもう見たくもない』っていう感じの意思表示になるわね」

「なんじゃそりゃあッ!」


 道理で女達が泣いて逃げたわけだ。

 混乱で頭が真っ白になったマナヤは、言い訳のようにまくし立てる。


「つか、メロラってのはともかく、もう一人なんて名前も知らなきゃロクに話をしたことすらねえぞ!? それでなんで急に求婚してくんだよ!?」

「そりゃ、あんたは村の英雄だもん。求婚したくなる子だって出てくるでしょ。召喚師の印象も変わってきてるし」

「だからなんでいきなり求婚にすっ飛んでいくんだよ!?」

「え? だって、求婚しないで何するの?」

「いやだから、その……まず気持ちを告白するとかだな」

「だからそれが求婚じゃない」

「ぶっ飛びすぎだってんだよ!!」


 まさか、この世界では人と『告白する』『付き合う』という感覚で『求婚』しているというのか。


「マジでそれがこの世界の普通なのか!?」

「……むしろ、マナヤの世界でそれが普通じゃないことに、あたしは今驚いてる」

「……」


 頭を抱え、その場にしゃがみこんでしまうマナヤ。


「……だいだいよ、そもそもテオの記憶でもシャラに『お嫁さんになりたかった』みたいなこと言われてたが、手を包み込んでたりは――」


 ……が。


「あ」


 テオの『最後の記憶』を思い出す。

 先ほど女性らに手を包み込まれた時にも、フラッシュバックした光景。



『私、テオ、の、お嫁さん……に、なりたかったん……だよ……』

 ――死に際のシャラが、自分(テオ)の手を掴んだ。

 そして、両手でそれを包み込む。

 テオがそれを自身の手で包み込み返した時、苦しそうなシャラの顔が、少し緩んで……

『……えへへ……ありが、とう……うれしい……』



(求婚……してたわ)


 がっくりとマナヤは項垂れた。



 ◆◆◆



「うん、それはマナヤ君が悪いね」

「振り払われたなんて、その子たちが可哀そうだわ……」


 その日の夕食。

 テオの両親にも思いきりジト目で咎められた。


「し、仕方ねーだろ、そういう文化があるなんて確認してなかったんだよ」


 そう言ってマナヤは、二人から目を逸らしながらステーキを乱暴に口に入れる。

 しかし眉を下げながらサマーは続けた。


「とにかく明日、その子達に謝りに行った方がいいわ。じゃないと最悪、マナヤさんが村で孤立するかもしれないから」

「……あーはいはい、すんません」

「私に謝っても仕方がないし、敬礼しても意味がないと言ったでしょう? それに、やるならちゃんと胸に手を当てて」


 小言を流すように適当に頭を下げれば、サマーに注意される。


「そもそも、なんでそんな文化になってんだよ」


 半ばヤケになって、マナヤはそう問いかけてみる。


「そうは聞かれても……どうしてかしら」

「なッ」


 サマーは困ったように苦笑いするのみ。理由もわからずに、そんな風習を続けているというのか。思わずマナヤは頭に血が昇る。

 しかしそこでスコットが「ああ」と口を挟む。


「私には少しわかるぞ。サマーと結婚したからな」

「え?」

「あなた?」


 驚いて聞き返すマナヤとサマー。


「サマー、お前に求婚した時は、危うくお前がモンスターの攻撃で窮地に陥りかけた後だった」

「そう、だったわね」


 少し懐かしそうに、二人がお互いを見つめ合う。


「あの時、私は思ったんだ。いつ、サマーがモンスターにやられて居なくなってしまうか、わからないと」

「!」


 スコットのその言葉を聞いて、マナヤもハッとなる。


「そう考えたら、居ても立ってもいられなくなってね。後悔する前に、サマーに求婚しなければならないと思ったのさ」


 そういうことか。

 この世界では、いつなんどきモンスターに大切な人を殺されてしまうかわからない。だからこそ、大切な人を娶るという文化が根付いたのかもしれない。まごまごしていなくなってしまう前に。

 いなくなってしまってからでは、後悔するから。

 いずれ殺されてしまったとしても、結婚したという思い出は残すことができるから。


 結婚する前にいなくなってしまったら、そんな思い出すらも残せないから。


「……」


 そう、いつの間にかいなくなってしまった、テオのように。

 チラリと、俯いたままのシャラを見つめる。


(そういえば)


 テオの『最後の記憶』では、シャラがテオに求婚していた。

 しかし、今は……


「……」


 彼女は特に、マナヤに対して求婚してくるような様子がない。

 そも、『三人の女性に求婚された』というマナヤの話にも、動揺するような様子を全く見せていなかった。


(求婚したのはテオにであって、俺にじゃない、か。当然だが)


 なぜ急に、そんな思いが自分の中から出てきたのか。

 わからぬまま、マナヤは炎包みステーキを乱暴に食らった。





 その日の夜。

 寝室に戻ったマナヤは、寝具に思いっきり体を投げ出す。


「てか、なんで俺が謝らなきゃいけねーんだよ」


 あえて日本語でつぶやく。

 仰向けに寝転がったまま、毛布をきつく握りしめた。


「だいたい、この世界が」


 首だけで、部屋の中を見回す。


 すべて同じような味で、代わり映えのしない料理。

 土の匂いが妙に鼻につく空気。

 個室に扉もついておらず、プライバシーの欠片もない寝室。

 電気が無く、夜間はピナの葉のロウソクもどきしかない照明。

 娯楽らしい娯楽がなく、帰れば食べて寝るだけの家。

 そして……


『私に謝っても仕方がないし、敬礼しても意味がないと言ったでしょう? それに、やるならちゃんと胸に手を当てて』


 テオの家族に非難される、日本風の〝お辞儀〟。


(それに)


 暗い窓の外にも意識が向く。

 いつどこで、誰が襲われるかもわからない。夜もまるで安心できない生活。


「……大丈夫。大丈夫だ。俺がまだ、前世のことを覚えてる証拠だ」


 慈しむように、思い出す。

 元の世界の生活を。兄である史也(ふみや)とのやり取りを。


(子どもの頃のことは、もう何も思い出せねえ。せめて、今残ってる記憶だけは)


 何度も、何度も思い返す。

 脳に、しっかりと焼き付け直すように。


(……史也(ふみや)兄ちゃん)


 せめて、夢の中でなら会えるだろうか。

 マナヤは毛布をめくり、その中に体をうずめた。


 ――ドウッ


「だああクソッ! またかよ!」


 救難信号の音だ。

 すぐさま飛び起き、緑ローブを引っ掴んで家を飛び出した。




 しかし、いざ駆けつけてみると。


「えーと、すまないね英雄どの。君が出てくるほどの襲撃じゃなかったよ」

「以前の襲撃の件がありましたからわかりますが、そんなに救難信号を信用できませんか?」

「わたしたちがロクに戦えないとでも思ってるの? 気分悪い」


 結局、マナヤの睡眠時間がさらに減るだけに終わった。



 ◆◆◆



 決定的なことが起こったのは、次の日の朝。


「――ちょっと! いつまで寝てるの!」

「うお!?」


 突然、大きな叫び声。

 ようやく寝付いていたマナヤは、跳ね起きてしまう。


「って、なんだ! なんだ!?」


 寝具から上体だけ起こし、周囲を見回して混乱してしまう。

 自分がいるのは、いつも通りのテオの部屋。だが寝具のそばに三人の女性が立って、マナヤを見下ろしていた。


「な、なんだお前ら、勝手に人の部屋に――」

「あんたがマナヤさんね! 聞いたわよ、メロラとステイシーの求婚を酷く振ったって!」


 中央の女性がそう言って、仁王立ちでマナヤを睨みつけた。


「は? え、あ、いや」

「どうして、よりによってあんな断り方したのよ! あの子たち、泣いてたじゃない!」

「酷すぎます! いくら英雄だからって、そんなに邪険にしなくったって、いいじゃないですか!」

「ちゃんと、あの子たちに謝ってきてよ! じゃないと、あたしはアンタを絶対に許さないからね!」


 戸惑うマナヤに、三人とも容赦なく非難の言葉を投げつけてくる。

 寝不足で、まだ頭が回り切らない。マナヤは、とりあえずまずは謝ろうと頭を下げる。


「わ、わかった。悪かったから――」

「なによ、それ! なんで敬礼なんかしてるの、しかもそんなだらしないやり方で!」


 しまった。

 またクセで、頭を下げてしまった。


「謝る気なんて、ないじゃないですか!」

「あたし達をバカにしてるの!?」


 他ふたりも、そんなこちらを軽蔑するような目で睨んでくる。

 おもわずマナヤはカッとなりかかった。


「お、おい! そもそもあんたらこそ何なんだよ! 人が寝てる部屋に、勝手に入ってきて! プライバシーの侵害だろうが!」


 そう叫んだ途端、三人の女性はさらに目つきが険しくなった。


「なに言ってるの! 寝てようが寝てまいが、部屋に入ることがなんでプライバシーの問題になるわけ!?」

「ごまかさないでください!」

「な――」


 まさか、またか。

 また、この異世界の風習か。


(なんなんだよ……)


 なおも、容赦ない言葉の刃を叩きつけてくる三人の女性。


(なら、何ならしても良いんだよ。何をしたら、いけないんだよ)


 自分の手が、震えるのがわかった。

 頭の中が真っ白になったあと、シンと痺れる。


(――なんで、俺ばっかこっちの風習に振り回されなきゃ)


 ギリ、という自分の歯ぎしりの音。そして――


「――出ていけェッ!」


 気づけば、怒号を発していた。





「マナヤくん、落ち着いたかい?」


 スコットの声。

 あの後、三人の女性はスコットとサマーに宥められ、いったん帰されたのだ。


「……なんで、あいつらを俺の部屋に入れた」


 居間のテーブルに座らされたマナヤ。

 そう問えば、向かいに座っているスコットとサマーが困惑の目で見つめてくる。


「そうは言っても、君に会いたがっている人がいるなら、会わせるのは当然だろう?」

「村で孤立してしまうかもしれない、と言ったでしょう? ここで会わせるのを断ったりしたら、もっと大変なことになってたわ」

「そうじゃねえよ!!」


 拳でテーブルを叩く。


「なんで俺に断りもなく部屋に入れた!? まだ俺も寝てたってのに、プライバシーはどうした!?」

「いや、未婚の男性の部屋に入ることは、別にプライバシーの侵害でもなんでもないだろう。それを禁じたら、誰も夜這(よば)いができなくなる」

「よば……ッ!?」


 スコットの返事に愕然とする。


「夜這いってなんだよ! まさか、ンなもんが認められてんのか!?」

「き、君の世界ではそうじゃないのか? 求婚する際に夜這いすることは、よくあることだろう」

「冗談じゃねえ! もし夜這いした奴が、相手の意に反して襲ったりしたらどうすんだ!?」

「その時は家族がすぐ駆け付けられるだろう? 騒げば、声は同居している者達の耳に届くんだから」

「な……」


 そういえば、寝室にも扉はついていなかった。

 まさか、そのために? 騒いでいる音が、隣室の者達の耳にすぐ届くように?


「……ふざけんな。んなもん、野蛮人じゃねえか。俺の世界じゃ夜這いなんざ犯罪だ」

「……マナヤくん」


 苦々しいマナヤの言葉に、スコットが俯いてため息。

 そして、意を決したように再び顔を上げる。



「君の世界のことは、もう忘れたほうがいい」



「――なん、だと」


 スコットの言葉に、マナヤは愕然とした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界との文化の壁がよりヤバくなってる! そりゃあ外国だとプライバシーも違うでしょうが、こりゃあストレスたまりますね。 [一言] テオのターン!
2024/05/09 20:38 退会済み
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