166話 召喚師解放同盟の快進撃
夜半。
集落の者たちが一部、ある小屋に密かに集まっていた。もはや小枝で組まれたものではない、丸太で頑丈に作られた小屋だ。
「ちょ、ちょっと待ってくれよキニアスさん!」
そこに集まった召喚師の一人――ゼルシスが、小屋の出口へと向かっていく中年の男性召喚師を引き留めた。
「降りるって、なんで今さら! やっと目当ての『マナヤ』たちが来たんじゃないか!」
「だからだ。ワシはもう、あの子らを『召喚師解放同盟』とやらに売り飛ばす気にはなれん」
振り返った中年召喚師は、顔をしかめていた。そのままなおも立ち去ろうとしたが、ゼルシスが彼の肩を掴む。
「どういうことだよ! キリアスさんだって、最初は乗ってくれてたじゃないか! この集落を作ったばっかりの頃に、召喚師解放同盟が俺たちに提案してきてくれたことを!」
「……たしかに、あの時は魅力的に感じておったよ。あの時はな」
中年召喚師は、悔やむように目を伏せる。
「たしかにワシとて、あの教本とやらが原因で糾弾された。領主さまに追放を命じられた時、妹にも言われたよ。『娘のことも考えて、立ち去ってくれ』とな。正直、家族にも愛想を尽かした」
「だったら!」
「だがな」
食い下がろうとしたゼルシスを、中年召喚師は声で押しとめた。
「屋台の女将の話を聞いて、気付いたよ。妹は、領主から姪を守ろうとしたのだろうとな」
「な……」
「領主さまの命令に背きワシを匿えば、年幼いあの子まで危険が及ぶ。妹はそれを危惧していたのだろう。一介の民に過ぎぬ妹ら一家が、領主さまに逆らうほどの勇気を持てないのは当然のことだ」
ゼルシスは絶句していた。
さらにそこへ、もう一人別の男性も立ち上がる。
「オレもキニアスさんに賛成だな。少なくとも、あのテオって子は信用できそうだ」
「な、お、お前たち正気か!?」
ゼルシスは歯ぎしりしながら顔を歪めた。
「マナヤの情報を提供すればいいだけなんだぞ! たったそれだけで、召喚師解放同盟は領都への復讐の手伝いを約束してくれたんだ!」
「じゃあ聞くけどな。あの召喚師解放同盟ってやつらは、オレたちの生活を支えるために何かしてくれたか?」
「……っ」
「テオくんたちは俺たちの生活基盤を整えてくれた上に、食事の提供までしてくれてる。先に条件を守らなきゃ何もしてくれなかった召喚師解放同盟と違って、あの人たちは先んじてオレたちを助けてくれてたじゃないか」
彼の言い分に、他の者たちも徐々にどよめきはじめる。
「そうよね……口先だけの召喚師解放同盟と違って、実際に助けてくれてるのよね。女将さん……シフナさんも呼んでくれたわけだし」
「今思うと、正直召喚師解放同盟ってのが本当に約束を守るのか、怪しいもんだ」
「ヴァスケスと言う男性の方は、まだいいでしょう。ですが、あのダグロンという側近のかた、我々を利用しようと企んでいるような顔をしてましたし」
「どっちを信用するっていったら、まぁ……」
と、集まった者たちの半数近くが立ち上がり、外へ出ようとしている。
ゼルシスは顔色を変えた。
「じょ、冗談じゃない!」
彼らを止めようと、入口の前へと先回りし立ちはだかった。
「もう少しだ、もう少しで領都に復讐できるんだぞ! これからって時に、なんで――」
「――何をしているのです、貴方たち」
が、突然その入口の扉が開いた。
聞きなれた女性の声が、ゼルシスの背に投げかけられる。
「ナ、ナキアさん!?」
「ゼルシス。貴方はまだ、召喚師解放同盟にこだわっていたのですか」
灰色に近い、薄い水色の髪を下げながら、ナキアはゼルシスを睨みつけた。
「何度も言ったはずですよ! 私たちは召喚師解放同盟などに協力はしない、これは決定事項だと!」
「そ、それを押し付けないでくださいって言ってるんですよ! 俺たちは、騎士のあんたとは違うんだ!」
「騎士以前の問題だと言っているのです! 我々の現状をどうにかしてくれるかもしれない、異国の方々が協力に来てくださっているというのに、恥を知りなさい!」
それでも言い訳するゼルシスを、ナキアは一喝。
ゼルシスは押し黙ってしまう。一つ嘆息したナキアは、小屋の中にいる者たち全員を見渡した。
「……さあ、みなさん。早く解散して就寝してください。今後、私に黙ってこのような会合を開くことは許しません」
ほっと安心したような者と、納得のいかない顔をしている者が半々。
だが、皆素直に動き始めた。ナキアの脇を通り、順に外へと立ち去っていく。
最後に残ったのは、ゼルシスのみ。
「ほら、あなたも」
「……」
憎しみの籠った目でナキアを一瞥。
だが、彼はすぐに目を逸らす。不貞腐れたような顔をして、外へと駆け出して行ってしまった。
「……ふう」
ため息をついたナキアは、小屋の中へと視線を移動させた。
人っ子一人残っていない部屋。それを確認したナキアは小屋の扉を閉め、自身も足早に立ち去った。
(やれやれ。あの調子では、まだ召喚師解放同盟を信じる者が半数ほどはいそうだな)
最初に立ち去ろうとしていた中年の男性召喚師――キニアスは、自宅までの夜道を急いでいた。
もはや家屋は、全て丸太小屋に変わっていた。隙間風に苦しめられた、枝だけの家とは段違いの快適さ。家を建て直してくれたテオら一行には、感謝しかない。
(ん?)
が、夜道の道中で人影を見つける。
ウェーブのかかった緑の長髪。物陰に隠れながら、こそこそと移動しているようだ。
(あれは、マナヤとやらと一緒にやってきた女……たしか、パトリシアとかいったか)
一行の中でも、現時点ではあまりこの村に貢献してきてくれなくて、正直印象が薄い。
声をかけようとしたが、すんでで思い直した。彼女は、人嫌いだったはず。
(どうせ用足しくらいであろうし、わざわざ呼び止めることもあるまい)
そもそも自分とて、召喚師解放同盟に与する集会という、やましい場からの帰り道だ。
キニアスは、自身も家の陰に隠れる。パトリシアに見つからないように気を付けながら、こそこそと裏手へと回り込んだ。
(……いや、ちょっと待て)
が、その時はたと気付く。
思わずパトリシアが向かおうとしていた先を見つめた。
(あの方向には、集落の外へ出る門しかないはずだが)
物陰から、パトリシアのいた方向を再度覗く。
が、彼女の姿は、すでにそこにはなかった。
◆◆◆
それから、数日後のこと。
「……」
フィルティング男爵領の領都から、街三つほど離れた場所にある村。
その村が一望できる、小高い丘がある。そこに、青く長い前髪で目元を隠している男が待機していた。
召喚師解放同盟の元ナンバーツー、ヴァスケスだ。
しかし今の彼は、新たな長。彼の後方には召喚師解放同盟の戦士たちがずらりと控えている。その数、焼く十二名。
さらにヴァスケスの傍らには、彼の腹心であるシェラドも佇んでいる。そしてその逆隣に……
「……やれやれ」
と、鼻の下のみ口髭を生やしたオールバックの赤髪の男性が目を開き、かぶりを振った。
ヴァスケスが、その口髭の男に訊ねる。
「どうだダグロン、町の住民の返答は」
口髭の男は、憎々しげに唇を歪めた。
「鷲機JOV-3を通して通達しましたがね。降伏する気などなさそうですよ。徹底抗戦を宣言しています」
と、村の方角を仰ぎ見ながら報告。
彼は中級モンスター鷲機JOV-3を街中に飛ばし、メッセンジャーとしたのだ。
『明日正午までに降伏し、物資半分と村に所属している召喚師全員を差し出せ。そうすれば、この村は見逃してやる』
といった、こちらの意図を通達したのである。
召喚モンスターは、視点変更して送り込むことで偵察兵として使える。そのモンスターを通して言葉を発したり、逆に相手の言葉を聴き取ることも可能だ。
ダグロンの反応を見る限り、おそらくメッセンジャーの鷲機JOV-3は破壊されたのだろう。
交渉決裂ということだ。ヴァスケスは、淡々と村の方角を仰ぎ見た。
「なるほど。やはりこの村は、あえて修羅の道を選ぶか」
「で、いかがされるのですかヴァスケス殿」
ダグロンがあてつけるような様子で伺いを立ててくる。
ヴァスケスは無表情のまま、彼を見下ろた。
「宣告通り、村には翌日正午まで猶予をくれてやる。今のうちに襲撃の準備を整えておけ」
「なぜ律義に、明日まで待ってやる必要があるのです? 丸一日も待って援軍が呼ばれでもしたら面倒です。宣告など反故にして、今晩にでも襲ってやれば良いではありませんか」
「それでは我々は、賊も同然だ。命に従うならば慈悲を与える、という誇り高い側面も見せねばならん」
きっぱりと言い放たれた言葉に、目を剥くダグロン。が、ヴァスケスは全く譲らない。
「翌日に援軍が辿り着くというならば、むしろ好都合というもの。激しい戦いをもって、我々は経験を積んでさらに強くなる」
「……強くなるどころか、兵を失う可能性はお考えで無いと?」
「生ぬるい戦いにしか勝てんようでは、どの道マナヤを超えることなどできん。私も前線に立つ。皆に通達しておけ」
「……」
呆れたように肩をすくめるダグロン。
ヴァスケスは踵を返し、村に背を向けて歩き始めた。
「それで、ダグロン。マナヤの足取りは追えたのか」
「ええ。『例の女』が、巧くマナヤに取り入ったようです。集落の者達に戦い方を教えるそうですよ」
後からついてくるダグロンが、得意げに説明を始める。
(神殿近くにある、あの集落に居るというなら、少なくとも明日明後日にこの町には来れるまい)
そのために、わざわざ遠方の町まで赴いているのだ。
まだ、マナヤと戦う段階ではない。戦力を強化し、充分な力を身に着けるのが先決だ。
「その女から、これを手に入れました」
姑息な笑みを浮かべたダグロンが、懐から何かを取り出す。
本だ。
「マナヤの奴はやあり、召喚師の戦い方を記した教本とやらを用意していたそうで。昨晩、これを受け取りました」
「ふん。取り入った上で盗ませるなどという姑息な真似は、できればしたくないのだがな」
本を受け取りながら、ヴァスケスは苦悩の表情を浮かべる。
マナヤは、着実に名声を広めている。
奴に対抗するには、こちらも騎士道精神溢れる面をみせていかねばならない。でなければ、同胞を増やすことは加速度的に困難になっていく。
「何を今さら」
しかしダグロンは、そんなヴァスケスを鼻で笑った。
「ヴァスケス殿とてマナヤには一度、してやられたと言っていたではありませんか。『テオ』という別人格を使って、トルーマン様らを欺いたと」
「……チッ」
「そのような輩に、馬鹿正直に正々堂々と勝負を挑んでやる必要が、どこにあります。トルーマン様の仇を取るため全力を尽くすべきでしょう」
忌々しげに、ダグロンから目を逸らすヴァスケス。
ダグロンは、加入した頃からこういう男だった。
人の心を弄ぶことを至上とし、他人を陥れて悦に浸る。腹立たしいやり方だ。将来的に召喚師を導く存在として、適確者であるとはとうてい思えない。
が、成果も挙げているだけに文句も言えない。トルーマンもそれをわかっていたからこそ、彼を起用していたのだろう。
(やはり、トルーマン様のようにうまくはいかないな)
ヴァスケスは、胸の前で拳を握る。
自分の役割は『召喚戦の研究』だ。
モンスターを使った戦い方のセンスを、トルーマンに認められた。だからこそ自身のそういう面を磨き、先入観を捨て、ありとあらゆる戦い方を試した。
結果、最も適確な召喚獣の扱い方を編み出すことができたと自負している。
だが、自分にはトルーマンほどのカリスマ性がない。
集団の頭となり、勝鬨をあげて兵を鼓舞するような資質ではない。その自覚くらいは、ある。
(まあいい。まずは、あの町だ)
手始めに、あの町で確かめさせてもらう。
召喚師解放同盟の新たな戦略、そしてその効果のほどを。正面から他『クラス』に挑んでも、我々はもう引けを取ることなどないほどの力をつけたことの証明を。
ドウ、と赤い救難信号が登る音が、背後の村から響いた。
◆◆◆
翌日の同時刻。
「やはり、隣接町の騎士団が村に入っているな」
同じ丘に立ったヴァスケスは、光学迷彩をかけたモンスターで自ら偵察をしていた。
昨日、村が上げた赤い救難信号。予想通り、召喚師解放同盟の襲撃に備えて騎士団を要請していたものだったらしい。
「だから、昨晩のうちに攻撃をしかけておくべきだと言ったのです」
後方に大量の召喚師解放同盟戦士を控えさせているダグロンが、毒づくようにそう吐き捨てた。
しかしヴァスケスは悪びれもしない。
「私が動く以上、結果は変わらん。むしろ、歯ごたえがあってちょうど良かろう」
怯むどころか面白そうに唇に弧を描き、背後の兵たちへと振り向く。
「――良いか! これまで我々は力を蓄え、雌伏の時を過ごしていた! 今こそ、我々の力を直接、連中に見せつけてやる時だ!」
トルーマンのやり方を思い出しつつ、声を張り上げる。
「我々召喚師を廃絶せんとした愚か者どもに、鉄槌を! 虐げられてきた召喚師達に、救いの御手を!」
歓声に沸く召喚師たち。
前方に向き直ったヴァスケスは、目の前に手をかざした。
「【鎚機SLOG-333】召喚! 【ヘルハウンド】召喚!」
ヴァスケスの目の前に、巨大な召喚紋が出現。
中からは、円筒状の金属製胴体を持つ、鋼鉄の塊が出現した。車輪で地面を踏みしめ、胴体側面には三つの巨大な鉄鎚が装着されている。
機甲系の最上級モンスター、『鎚機SLOG-333』。
他の最上級モンスターは、ことごとくマナヤに奪われてしまった。今や、ヴァスケスの所持するこの鎚機SLOG-333が、唯一手元に残った最上級モンスター。現在の召喚師解放同盟の、最大戦力だ。
さらに、同時に召喚された茶色い大型犬、『ヘルハウンド』に飛び乗るヴァスケス。
他の兵たちも次々とヘルハウンドを召喚し、同じくそれらに跨った。
「――突撃! 【行け】!」
ヴァスケスが号令と共に、モンスターに『行け』命令を下す。
途端に、鎚機SLOG-333が下部の車輪から土煙を吹き、凄まじい勢いで町へと突撃していく。同時に、召喚師ら自身も。跨っているヘルハウンド達が、飛び出すように駆け出した。
とたんに、村の防壁上から次々と放たれてくる無数の矢。
弓術士らの攻撃だ。さすがに彼らは、召喚師解放同盟が待機していた場所に気づいていたらしい。
ヴァスケスは後方へ叫んだ。
「総員防御! 【竜巻防御】!」
兵に指示を出しつつ、自身に跨っているヘルハウンド、そして鎚機SLOG-333に竜巻防御をかける。周りの兵も、次々とそれに続いた。
ヴァスケスらに飛んできた矢は、命中直前にカクンと軌道が逸れた。矢は次々と地に突き立ち、または空へと逸れていく。
「ヴァスケス様!」
ヴァスケスの左後方でヘルハウンドを駆っていた男が、声をかけてきた。腹心であるシェラドだ。
「まもなく、黒魔導師の射程圏内です!」
「心得ている! 先陣は私が切る、お前は突破の準備を!」
言われるまでもない、と言わんばかりに指示を出した。
力強く頷くシェラド。彼は駆けるヘルハウンドに跨ったまま、前方に手を掲げた。
「【狼機K-9】召喚! 【火炎防御】、【電撃防御】、【竜巻防御】」
緑色の金属で身体が構成された、狼型の機械モンスター『狼機K-9』を召喚。
その機械の狼は、すぐ光の防御膜に覆われる。かけられるだけの防御魔法をかけたのだ。
「【跳躍爆風】!」
間髪入れず、シェラドは狼機K-9を前方へと放り込む。
突然飛び込んできた機械モンスターに、防壁上の弓術士や黒魔導師が慌てて攻撃している。
が、黒魔導師の炎や電撃は跳ね返された。魔法を撃った黒魔導師達自身を焼き、弓術士の矢は空しく逸れていく。
狼機K-9は、防壁の上に着地していた。
シェラドはすかさずそちらへと手をかざしている。今はまだ、遠い。だが、シェラドを乗せたヘルハウンドも防壁に近づいていく。
とうとう狼機K-9が、補助魔法の射程圏内に入った瞬間。
「――【自爆指令】!」
シェラドの呪文を受け、遠目に狼機K-9がバチバチと危険そうな火花を纏うのが見て取れた。
防壁の上で、村の戦士たちが迎撃せんと慌てふためいている。が、もう遅い。
――大爆発。そして、崩壊音。
村の頑健な防壁が、半壊していた。
自爆指令は、指定した機械モンスターを自爆させる魔法。その機械モンスターを、爆弾として使える。五秒のタイムラグこそあるが、それまでに破壊されなければ大爆発だ。
だいぶ近づいてきたヴァスケスが、目を凝らす。
「……いくらかは生き残っているか」
完全に崩れた防壁の瓦礫から、数名の戦士が起き上がってくるのが見て取れた。おそらく、白魔導師の結界に守られたのだろう。
だがすぐ、崩れた瓦礫が組み上がり始める。
建築士だ。破壊された防壁を修復しようと、さっそく岩を操作しているのだろう。
「このチャンスは逃さん!」
そう吠えたヴァスケスは、隣を並走する鎚機SLOG-333に手をかざした。
「SLOG-333、お前の力を見せて来い! 【重撃獣与】、【跳躍爆風】!」
破壊力を増強する補助魔法、そして、敵を前方へ放り込む魔法。
破裂音と共に、鎚機SLOG-333が空を舞った。
(ふむ。荒地でのSLOG-333の跳躍距離……マナヤの書いた本は、正確だったようだな)
ズゥン、と轟音が鳴り響く。
鎚機SLOG-333は、瓦礫から起き上がってきた騎士達の目の前に着地していた。
「なっ、最上級……!?」
「あ、危ない!」
狼狽してしまう騎士たち。
建築士らしい別の騎士が、慌てて彼の前方に瞬間的な防壁を張っている。
が、遅い。
既に鎚機SLOG-333は攻撃体勢に入っている。
鈍い音を上げて胴体から離れ、宙に浮かび上がった三つの鉄槌。それは、すさまじい速度で飛来し――
――ドバァッ
張られた防壁が、一瞬で粉微塵に砕かれる。
勢いそのままに背後の騎士の体をも、三つの鉄槌で爆砕させた。
舞い散る血飛沫。
殴られた騎士は、遺体すらも残さぬままこの世から去った。
(――蹂躙だ。マナヤの本がどの程度正しい情報か、この戦いで確かめさせてもらうぞ!)
頼もしい最上級モンスターをお供に、ヴァスケスは前髪に隠れた目に、危険な光を灯した。




