婚約者が浮気していました、自室に女を連れ込んでいたのです。これはさすがに意見を言わずにはいられません。
「エリック、浮気していたのね!」
婚約者である彼の浮気が発覚した。
彼は自室に私ではない女を連れ込んでいたのだ。
「何だようるせぇな」
「女を連れ込むなんてさすがに酷いわ。しかも薄着させて……」
「薄着くらいいいだろ! 全裸じゃないんだから!」
「男女で密室で、なんて……さすがに問題だと思うわ」
これには黙っていられなくて。
「こんなのは裏切りよ!」
そう主張すると。
「あ、そ。じゃあいいわ。お前なんかもう要らね。婚約は破棄するから」
はっきりそう言われてしまった。
エリックにとって私は大切な存在ではなかったのか。婚約しているというのに、所詮その程度だったのか。少し責められただけで要らないと言えるような。彼の中の私の価値はその程度でしかなかった。
「……もういいわ。さよなら」
私たちには共に歩む未来はなかった。
きっとこれが定めだったのだ。
私たちが行く未来にはこれより先はなかったのだろう。
それは、大雨によって崖崩れが起こるようなもの。
ある意味それは絶対的な定め。
◆
あの後私には良縁が舞い込んできた。
父が営む会社の取引先の人、その息子さんから、私と一度会ってみたいという話が出てきたのである。
それで一度会ってみることになった。
すべてはそこから始まって。
一度会ったその時に意外と気が合ったということもあって、私たちはもう一回もう一回と顔を合わせるようになっていった。
もちろん自分たちの意思である。
当然私もだが、彼の方も、会って話をすることを積極的に望んでくれていた。
その果てで、私たちは結ばれた。
ちなみにエリックはというと。
あの浮気相手の女性と深い仲に発展していたようだが、その後回復させることが難しい病をもらってしまい、それによって結婚はできないこととなってしまったそうだ。
また、エリックは、その病によって徐々に衰弱。
移されたことが判明した日から半年も経たず、彼は自宅のベッドにてこの世を去った。
◆終わり◆




