聖女フィリアーニア、婚約破棄される。~二人にとっては邪魔者でも、民らにとっては偉大なる乙女なのです~
聖女フィリアーニアは婚約破棄された。
「悪いがお前との婚約は破棄とさせてもらう」
フィリアーニアの婚約者である王子ルッキーは、婚約者にして聖女であるフィリアーニアよりも幼馴染みネネを大事にしていたのだ。
「お前! ネネを虐めていたそうじゃないか! ああ、まったく、何ということだ……聖女ともあろうお前が、俺の幼馴染みだというだけの理由でネネを虐めていたとは。ああ、もう、信じたくないような話だ。何と心の狭い聖女か……!」
ネネの嘘を信じ込んだ彼は、一方的にフィリアーニアを悪であると決めつけていて。
「お前のような悪女は今すぐここから去れ! 城から! そして国から! この国には聖女とは名ばかりの悪女など要らないのだから」
そうしてフィリアーニアは婚約破棄のみならず国外追放という罰を受けることとなった。
◆
フィリアーニアが国を去った後、ルッキーはすぐにネネと婚約した。
しかしその頃から国が徐々におかしくなってゆく。
やたらと天災に見舞われるようになったり、不幸な出来事が連発したり、とにかくろくでもないことが多数起こり始めたのである。
――それは、国神様の怒りであった。
やがて国は傾き、怒った民らによって王家は倒される。
国王はもちろんのこと、王妃も、そして王子王女も。その多くが民の手によって捕えられて処刑された。もちろんそこにはルッキーも含まれている。若い王族女性の中には売り飛ばされ奴隷になることで命だけは救われた者もいたことはいたが、いずれにせよその後が地獄であることには変わりなかった。
ルッキーは民らによって八つ裂きの刑に処された。
また、ネネはというと、王子をたぶらかし国を穢した女として魔女と呼ばれ、怒る民らの目の前で罵声を浴びせられながら火刑に処されたのであった。
フィリアーニアを追放してまで結ばれることを選んだ二人だが、その未来に希望の光はなかった。
◆
王家が倒れた後、フィリアーニアは再びその地へと戻ることとなった。
そこには民からの強い希望があったのだ。
その地で暮らす人々は新しい光を求めていた。
他国へ出ていっていたフィリアーニアだったが、民の言葉に心を動かされ、生まれ育った国へと帰還する。
「フィリアーニア様! おかえりなさい!」
「愛していますっ」
「女神さまのようですっ」
「ずっと待っていました! 貴女のような素晴らしき乙女を!」
「偉大なる指導者!」
帰還の日、フィリアーニアは、多くの民に迎えられた。
「「「おねえちゃん、おかえりなさーい!」」」
こうして生まれ育った国へと戻ったフィリアーニアは、その地を愛をもって良き形で治め、その後数千年にわたり繁栄する幸福に満ちた国を築いたのであった。
◆終わり◆




