少し変わった能力のせいで婚約破棄されたのですが、後にその能力が王子の命を救うこととなりました。
瑞々しい肌を持つ美女リリクリアは生まれつき皮膚から大量の水を噴出することができる。
それは画期的な能力。
見る者を必ずと言って問題ないほど驚かせるもの。
しかし、彼女の婚約者である青年アミットは、その能力を良く思っておらず。
「体液みたいでキモイ。肌が綺麗で良い女だと思ってたけど、その能力はムリ。てことで、婚約は破棄するから」
彼はある日突然そんな風に言ってリリクリアとの関係を終わらせた。
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あの一件以降、リリクリアは大層落ち込み、毎日のように泣いていた。
この能力さえなければ。
こんなものを生まれ持たなければ。
彼女はいつもそう言っていた。
彼女にとってその特殊能力は幸福への道を邪魔する存在でしかなかったのである。
――だが、ある時、火災から王子クセリッセオを救い出すことに成功。
「リリクリアさん、本当に、本当に……ありがとう、助けてくれて」
「いえ……」
救助の際、リリクリアは肌から水を噴出させた。それによって火の勢いを弱め、少しできた通り道を抜けてクセリッセオを助け出したのである。本来能力を使うことをよしとはしないリリクリアだが、その時は必死だったので反射的に能力を使っていた。
「気持ち悪い、ですよね……こんなの。私みたいな女。すみません殿下、私はもう……これで、消えます」
少しでも早く立ち去ろうとするリリクリアの手を。
「待ってください!」
クセリッセオは強く掴んだ。
「え……」
「貴女にお礼がしたいのです!」
その時のクセリッセオの瞳は真っ直ぐな光を宿していた。
「そして……貴女に、貴女の勇気に、惚れました」
クセリッセオはどこまでも真っ直ぐな瞳で目の前の今にも逃げ出してしまいそうな彼女を見つめる。
「え? あ、や、えとあの……」
困惑の海に沈みそうなリリクリア。
紅に染まる二つの瞳が揺れている。
「リリクリアさん、僕は貴女に惚れてしまったみたいです」
「詐欺ですか?」
「違いますよ! 詐欺なんかじゃ!」
「……分かりました、では恐らく、気が動転されているのですね」
なかなか受け入れないリリクリアに。
「違う!」
クセリッセオは調子を強める。
「貴女が好きなんです!!」
彼はついに本心を明かした。
◆
あれから少しして、リリクリアはクセリッセオと結婚した。
クセリッセオからの猛烈アプローチがあってそこへ至ったのだが――リリクリアは今、幸せに、いつも笑って生きている。
一方アミットはというと、複数の女性を家に招いて男女でいちゃつく会を開いていたある日の晩に謎の発火による火事が発生し、それに巻き込まれて落命した。
◆終わり◆




