晩餐会にて侮辱したうえ婚約破棄してきた彼は、会場内にてあの世へ送られることとなりました。
とある晩餐会にて、婚約者ミッドレーは私をいくつもの言葉で侮辱したうえ婚約破棄を宣言した。
「何あれ、可哀想過ぎる……」
「ちょっと酷くない……?」
「サイテーよね」
「心なさすぎでしょ、鬼か、って」
幸い、耳に入ってくるのは私の味方をする言葉ばかりで。
どうやら周囲からは私に問題があるようには見えていないようだ。
そういう意味では周囲の目は正しいのではないだろうか。
そうして何とも言えない空気のまま進行されてゆく晩餐会だったが……。
突如キュイイイイイイイィィィィィィと得体のしれない音。何か気になってふと窓の方を見れば、紅い何かが近づいてきているのが目に映る。それはドラゴンのようであった。
やがて響く、ガラスが粉砕される棘のある高い音。
「きゃああ!」
「何!? 何なの!? 何事ッ!?」
広がる悲鳴や緊迫した声。
割れた窓から紅のドラゴンが侵入してくる。
皆怯えていたが、それが見据えているのは、明らかにミッドレーただ一人であった。
(ミッドレーを見ている……?)
やがてドラゴンはその長い尾を振り、ミッドレーを壁に叩きつけた。
「ぐあああああ!」
それからもドラゴンはミッドレーだけを徹底的に痛めつける。
「ぎゃ! ぎゃあ! ぐ! ぐうはあああああ! ぎゃぼええええええ! ぐはっ、ぁ、ぐはっ、ぐはあ! ぎゃあああああ! た、たすけ……うぐぎゃああああああああああ!」
そうしてミッドレーはドラゴンに叩き潰され、駆除された小さな害虫であるかのようにこの世を去ったのだった。
――そして私はその紅いドラゴンと結婚することとなった。
ドラゴンの妻、として歴史に名を遺すこととなるなんて、この時はまだ知らなかったのだけれど……。
◆終わり◆




