婚約者とその幼馴染みである女性がぐるになって私を貶め恥を掻かせようとしているようなので、反撃します。
婚約者である青年エイトリフットとその幼馴染みの女性アマーニアは私の存在を邪魔な存在であると認識していたようで、ある晩餐会にて、私を貶めかつ恥を掻かせようと工作してきた。
まず、エイトリフットが、ほぼ捏造に近い内容ながら私の悪いところをいくつも挙げてそれを理由として婚約破棄宣言を行う。
そしてそれと同時にさりげなく私に接近したアマーニアが私のドレスを切り裂こうとする――それは下着の露出で恥を掻かせようという悪意だ。
だが私はそのことを察していたので、婚約破棄はどうしようもなかったけれど、ドレス切り裂きだけは回避することに成功した。
「なになに?」
「うそでしょ」
「ドレス裂こうとするとか……こわぁい……」
「ええっ、意味分からん」
「どういうことですの……? これは、一体……?」
居合わせた晩餐会参加者たちは皆動揺している様子だった。
「お前はもう要らない! 今すぐ俺の前から消えろ!」
エイトリフットが叫んできたので。
「そうですか、分かりました」
取り敢えず簡単に返事をして、それから。
「アンビラーバ、アンブローバ、アンビラーバ、アンビローバ、アンバローテ、アンバローロ、アンバローブ、アンビローバ、アンビラーバ、アンブローバ、アンビラーバ、アンビローバ」
歌いながら踊る。
周囲の人たちは私が急に踊り出したことに驚き不審者でも見るかのような目を向けてきている。だがそれは仕方ないことだと思う。婚約破棄された人が急に踊り出したら、その場面を目撃したら、誰だって怪訝な顔をしてしまうものだろう。私だってその立場であったならきっとそんな感じの反応をしたものと思われる。なのでその人たちに非はないのだ。
……だがこれは単なる踊りではない。
「アンビラーバ、アンブローバ、アンビラーバ、アンビローバ、アンバローテ、アンバローロ、アンバローブ、アンビローバ、アンビラーバ、アンブローバ、アンビラーバ、アンビローバ、アッババ~、アンビラーバ、アンブローバ、アンビライバ、アンビロンバ、アンバロウテ、アンバロイロ、アンバロンブ、アンビロアバ、アンビラウバ、アンブロイバ、アンビランバ、アンビロビバ、アッババ~」
踊り出しから数分が経った時、突如光が降り注ぎ、それが消えた時には会場内に二匹の蛇に似た魔物が召喚されていた。
そう、実はこれ、魔物を召喚する踊りなのである。
「うわあああああああ!!」
「い、いや、いやあああああああああ!!」
蛇のような魔物はそれぞれエイトリフットとアマーニアに襲いかかった。
会場内に響く二つの悲鳴。
それは凄まじい最期を表現しているかのようであった。
――かくして、悪しき人間であるエイトリフットとアマーニアはこの世を去ったのだった。
だが自業自得。
この世を去ることになっても可哀想には思わない。
私に嫌がらせをしようなんて考えるからそういうことになるのだ。
さようなら、エイトリフット。
さようなら、アマーニア。
……もう二度と会うことはないでしょう。
◆終わり◆




