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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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婚約破棄が繋いでくれた縁を大切にしたいと思います。

 婚約者ルリーフに婚約破棄を宣言された帰り、山道を歩いていると崖から飛び降りようとしている一人の男性に遭遇する。


「やめてください!」


 気づけば思わずその人の手首を掴んでしまっていて。


「え……」

「死んではいけません! 落ち着いてください、大丈夫、大丈夫ですから」


 そうして私は出会ったのだ――その美しい男性エヴィリットに。




「衝動的にあのようなことをしてしまい……驚かせて、すみませんでした」

「何かあったのですか?」

「はい。実は……ショックなことが、ありまして」

「ショックなこと?」

「婚約破棄されたんです。婚約していた女性から。あんたには男としての魅力がない、とか何とか言われて」


 驚いたことにエヴィリットも私と同じ婚約破棄されたばかりの人間だった。


 どうしてこんなことが?

 どうしてこんな縁が?


 不思議で仕方ない。


 まさかこんな展開が待っていたなんて。


「でも、思い返してみれば、僕は確かに無能だったかもしれないと思い……悲しくて、ふがいなくて、こんな僕はこの世界にいない方が良いのかもしれないって、段々そう思えてきて……」

「そんなことありません!」

「え」

「実は私も婚約破棄されたてほやほやなんですけど、自分を無能だなんて思っていませんし、消えた方が良いみたいなことは思ったことはないです。そんな私でもこうして普通に生きているのですから、エヴィリットさんも普通に生きてゆくで問題ないと思います」


 それに、こんなにも美しいエヴィリットなのだから、たとえ誰に聞いたとしても彼のことを『この世界にいない方が良い人間』なんて言う者はいないだろう。


 彼には良いところがある。

 自らあの世へ逝くなんて惜しい。


「ですから、生きましょう!」


 私たちには共通点がある。それは婚約破棄されたということ。自分の意思とは関係のない出来事で、でも、だからこそ共通点の意味を強く深く感じるところでもある。


 二人がこうして出会うことができたのは、きっと、運命の女神がそうなるように導いてくれたからだろう。




 ――数年後。


 私とエヴィリットは結婚し夫婦となった。


 初めて出会ったあの時、心の中で密かに運命を感じていたけれど、まさか本当に結婚するところまで発展するとは想像していなかった。


 でも現実はそうなった。


 理不尽に婚約破棄されたという共通点が私たち二人を強く結びつけたのだ。


 エヴィリットとの生活は穏やかな心地よいしとても楽しい。だからこそこれからもこの空間を大切に守っていきたい。優しい空間、優しい世界、それをいつまでも抱き締めていたいのだ。


 ちなみにルリーフはというと、あの後少ししてこの世を去った。


 何でも、婚約破棄後数週間で次の恋人ができたそうなのだが、ある晩その女性と些細なことで喧嘩になってしまい結果ふられてしまったそうで――それに絶望してルリーフは自ら死を選んだのだそうだ。



◆終わり◆

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