婚約者がある日突然婚約の破棄を告げてきました、それも一方的にです。~その後彼はこの世を去ることとなったようですね~
「君はさ、僕には相応しくないんだ」
婚約者ルルブールスはある日突然そんなことを言ってきた。
「え?」
「だから、君との婚約は破棄とするよ」
彼は平然とそんなことを言い、私との関係を終わらせる道を選んだ。
◆
「ルルブールスくん、そんな人だったの!? それはサイテーだわ」
「酷い人ね」
「あり得ないってそれ……酷すぎでしょ、重要なことなのに話し合いもろくにせずに決めるなんて……」
突然の婚約破棄について友人らに聞いてもらったところ、私を悪く言う者はいなかった。
「私、悪くはないわよね……?」
そう問えば。
「当たり前! 気にしなくていいって!」
「向こうが勝手なのが問題なのよ。貴女には非はないわ。当然じゃない、何かやらかしたというわけでもないのだし」
心強い励ましの言葉が返ってくる。
「気にすることないない!」
「絶対、もっと、彼より素晴らしい人に出会えるって」
「そうよ。これはきっとそこへ至るための道筋。間違いない、そう思うわ。だらか大丈夫、幸せはきっとやって来る」
彼女たちの言葉を聞いて安心した。
私は悪くないのだ、と、そう思えたから。
◆
あれから少しして、ルルブールスの訃報を耳にすることとなった。
そんな未来が待っているとは思わなかった。でもそれは現実で。彼は確かにこの世を去ることとなってしまったのだった。
……というのも、彼は危険な世界で生きる男の女に手を出してしまったのである。
それによって罰を与えられて。
その際負った傷が原因となり死へと誘われることとなってしまったようなのである。
私と別れた後に彼が手を出した女性がその人だったから悲劇が起きた――もしそれが別の女性であったなら、普通の女性であったなら、そんな悲劇は起こらなかっただろう。
でもそれは今さら変えられはしないことだ。
惚れる女性を変えることはできない。
既に過去のことだからなおさら。
――そう、つまり、彼は結局死ぬしかなかったのだ。
それが彼の運命だった。
そして彼の人生でもあった。
きっと、それ以外の道などありはしなかったのだ。
◆
婚約破棄から二年ほどが過ぎ、私は、共にあって心地よいと感じることのできる男性と巡り会うことができた。
親戚の女性の紹介という出会いであった。
そのため刺激的な恋はなかった。
けれども会って話をしているうちに段々彼の芯の部分に惚れるようになっていった。
彼みたいな人に出会うのは初めて、そんな気がした。
で、関係性は着実に進んでいって。
その果てに私たち二人は結婚。
ついに結ばれたのであった。
そうして彼と結婚した今、私は、居心地の良い家を手に入れることができている。
彼とならきっとどんなことだって乗り越えてゆけるだろう。
そして未来へ。
今は希望を瞳で感じている。
明日という名の光を。
◆終わり◆




