婚約者のことをイタ女なんて呼ぶのは人としてどうかと思いますよ。~失礼な人とは離れ、私は私なりの人生を歩むことにします~
生まれつき妖精を使役する能力を持っていた私ローザは婚約者アンヅンに嫌われていた。
アンヅンはいつも顔を合わせるたびに「妖精が何とかとか言い出すなんてキモイ」とか「イタ女だな、ほんと、イタタ、イタタテテテ女だな」とかそんなことばかり言ってくるのだ。
彼の生きがいは私に失礼なことを言うことなの? と聞きたくなるくらい、彼はいつも私に失礼なことを言ってきていたし、またそれを大変楽しんでいる様子だった。
そんなアンヅンはある日急に呼び出してきて「俺、この娘と結婚することにしたから」と告げてくる。
彼の隣には一人の小柄な女性。
くりくりした目の可愛らしい雰囲気の人。長い金髪もお人形さんのような可愛らしさを漂わせている。小ぶりな唇には淡い桃色のリップが艶やかに塗られている。
「お前みたいなイタ女と生きる気はさらさらねーから、婚約は破棄な!」
それがアンヅンが私へかけた最期の言葉となる。
――というのも、その翌日、アンヅンはあの世へ逝くこととなったのだ。
アンヅンは女性との新しい婚約を祝う会を友人らに開いてもらったそう。で、その中で友人の一人がお祝い会を盛り上げるために大量の火薬を準備していたそうなのだ。
だがそれが思わぬタイミングで爆発してしまった。
とてつもない威力の爆発が突如発生。そしてその時ちょうど近い位置にいたのがアンヅンで。結果アンヅン一人が大爆発に巻き込まれる形となってしまったのであった。
……と、そんな風に、かなり呆気ない最期だったみたいだ。
私はまたここから新たな一歩を踏み出す。
決して折れたりはしない。
希望ある未来へ。
光ある明日へ。
生きている限り幸せを掴むチャンスはある。
それは確かなことだ。
たった一つの悲しみですべてを手放すなんて惜しいとしか言い様がない。
色々なことがあっても幸いこうして無事生きてはいるのだ――それを幸福と思い、前を見据えて歩むことこそが、明るい未来への一歩目だろう。
取り敢えず妖精の力を借りて人助けをする店を開いてみた。
この機会に改めてやりたかったことに手を付けてみるのも悪くはなさそうだ。
◆終わり◆




