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傘を差そう
詩のような作品です。
ねぇ 傘を差そう なんてことのない日に
さよならを 告げるような 淡い色の唇
夕暮れを背に 過去にも別れ告げる
悲しげな 小さな声が 耳を抜けてゆく
寂しさも 悲しさも すべて
世界という 大きなものに 包まれて
溶けて どこかへ 行ってしまう
愛も 想いも 二人の時間も すべて
ねぇ 傘を差そう ありふれた日常に
さよならと 語るような 澄んだ白い頬
夜明けはまだ遠くて 夜はあまりにも深すぎる
愛しさをはらんだ 小声が 耳を擦っていった
重く甘いお菓子も 淡く溶けるお菓子も
舌でなぞる そのたびに 心の奥まで震えるよう
柔らかな色 己の色 繰り返し求め
乾ききった舌を 伸ばせば 軽やかな歌に惹かれる
触れてみたい 舐めていたい
愛を 想いを 二人の日々を すべてを
ねぇ 傘を差そう なんてことのない日に
さよならを 告げるような 淡い色の唇




