晩餐会中にいきなり婚約破棄宣言され戸惑っていたのですが、そこへ現れた謎の男の魔法によって彼は……!?
「あんたとの婚約だが、破棄とすることにした!」
婚約者モッツォレオは突然そんなことを宣言した。
とある、なんてことのない、晩餐会でのことである。
「なにこれなにこれ、酷くない? どういうこと? 意味が分からないわ」
「こんなところで宣言するだなんてどうなってるのよ……」
「意味が分からないぞよ。なんだあの男は。もうとにかく意味不明ぞよ」
だがその瞬間。
突然会場に入ってきた一人のひらひらレースワンピースを着た男が。
「ワルイコ、は、恥さらせぇ~いっ! はっぴぃ!」
謎の呪文を唱えた。
すると。
「う、うわあああああ!?」
モッツォレオは急にパンツ一枚になってしまう。
「な、な、なんだこれええええ!? なんでこんなことにいいいいいいい!?」
彼はあっという間に笑い者になってしまった。
「ぎゃはは! ウケるぅ!」
「何ですの、あれ、恥ずかしい」
「それなぁ……きついわぁ……本当に……」
婚約破棄にはなってしまったけれど、恥を掻いたのはモッツォレオのほうであった。
◆
時は流れ、あれから数年。
私は穏やかな家庭を築くことに成功した。
モッツォレオからは切り捨てられてしまったけれど、そんなことはどうでもいい。今では些細なことだと感じる。辛かった記憶だっていつかは遠ざかってゆく。ただ息をしているだけで、どんな出来事も、いつの日かは確かに過去になってゆくのだ。
ちなみにモッツォレオはというと、あの時の出来事によって心を病んでしまったそう。
あの時のことがトラウマになっているらしくて。
今でも毎日のようにそのトラウマな出来事の夢をみるそうだ。
きっと一生、彼はその闇にまとわりつかれたまま生きてゆくのだろう。
だがそれは彼が背負うべきものだ。
彼は私を理不尽に切り捨てた。
ある意味その償い。
された私が言うのも変かもしれないけれど、でも、きっと神様が彼に与えた償いでありある種の罰なのだろうと想像する。
◆終わり◆




