幼い頃から魔法の才に恵まれていたのですが……。~理解してくれる人たちのために生きるというのもまた人生ですよね~
幼い頃から魔法の才に恵まれていた私リリアだが、一つ残念なことがあり、それは――私が使う魔法に必要な呪文はかなり長いということであった。
たとえば、火を放つ呪文。
ファイアファオアファイアボアボアリスボアリオファイオファファファイリイオファイアファオアファイアボアフォイリスフォフォボイボアフォイフォアファイオリオファイボファイアファリアファオアファイアボア。
たとえば、無から水を生み出す呪文。
ウォテリアウィークルウォンテリオウォタトリアスウォッタカタンタンウォッタカタタンタタンタンタタタンウォテリアウィークルオーターオータタオータータータタンタウォッタカタンカンタカウォテリアウィークルウォットウォットウォットトットトトット。
いずれも、かなり高い効果を持つ魔法ではあるのだ。
しかし中には呪文の長さを馬鹿にして笑う者もいる。そういった者たちは大抵、呪文はある程度短いもの、と思い込んでいる。ゆえに長い呪文を使った魔法と言うものを理解できないのだ。その人たちは、呪文は短い方が便利、すべてにおいてそういうものであると思い込んでいる。そして、長い呪文を唱えてでも高い威力を持つ魔法を使うという意味が理解できないようである。
……まぁ、それはそれでそういう常識もあるものかもしれないため、仕方ないことなのかもしれないけれど。
だが厄介なことがある。
というのも婚約者である男性ローバンツもそっち派の人間なのだ。
彼はことあるごとに私を馬鹿だの愚かな女だの言ってくる。
加えてたびたび「お前は低級魔法使い以下だ」などと侮辱してくる。
ローバンツは私という存在を少しも受け入れてはくれないのである。
――そんなある日。
「リリア。お前との婚約だけどさ、破棄するわ」
ついに告げられてしまった。
「え……」
「だ、か、ら、婚約破棄!」
「……本気ですか?」
「当たり前だろ! 本気に決まっている! お前とはもう関わらない!」
もう結婚式も近いというのに、彼はそんなことを平然と言ってのける。
なんという人だろう。
心ないことを言うのみならず周りを振り回すようなことまでして。
「お前みたいな雑魚魔法使いはさっさと消えろ」
私には主張する権利は与えられなかった。
……そうしてローバンツとの関係は終わりを迎えてしまうのだった。
◆
あれから三年。
私は困っている人を助ける組織を立ち上げ自ら発明したいくつもの魔法を使って人助けに精を出す日々だ。
事務所には毎日のように感謝状やお礼の手紙が届く。
そのたびにこの仕事をしていて良かったと再確認できる。
ちなみにローバンツはというと、私との婚約を破棄した次の日に馬車数台が絡む事故に巻き込まれてしまったそうで、その際に負った傷が原因となって数日後に亡くなってしまったそうだ。
私の魔法があれば救えた命だったのでは……、なんて思うけれど。
でも恐らく彼はそれを望まなかっただろうから。
そんな親切心を出すのは無意味なことだろうと考えるとやはり放っておくしかなかったのかなと思う。
◆終わり◆




