学園を卒業する日に想いを告げてきた彼と婚約するに至ったのですが、その後彼は裏切りまして。~許しては差し上げませんよ~
「好きです! ローズさん!」
「え……」
それは学園を卒業する日のことだった。
卒業式を終えて家へ帰ろうとしていたら。
在学中まともに喋ったこともなかった男子学生ロッツが声をかけてきて。
「以前からずっと気になっていました……いや、本当に、好きだったんです!」
彼は真っ直ぐに想いを伝えてきてくれたので。
「僕と将来を見据えつつ友達からお願いできませんか!?」
「ほ、本気ですか?」
「もちろんです! ローズさんにずっと憧れていました! もう何年も! 急なことで失礼とは分かっているのですが……どうか! どうか、お願いします!」
最初こそ戸惑ってまともな返事はできなかったけれど。
「友達からで構いませんので、お願いします!」
「分かりました。では、そのような形で。こちらこそよろしくお願いします」
その熱量に圧倒されて。
気づけば彼の申し出を受け入れていた。
――それが私たちの始まり。
その後、ある程度の交際期間を経て、婚約した。
だが幸せな婚約期間にはならなかった。
「ローズだろ? あいつさ、顔だけ女だったんだ」
「ええ~酷くないですかぁ~? そんな言い方するなんてぇ。最初はロッツさまのほうから声かけたんですよねぇ~?」
というのも、婚約してから間もなく、彼は浮気を始めたのだ。
「そうだけど。でも外れだったわ。はーぁ、こんなことになるなら他の女にしときゃ良かったな」
「ワタシとかぁ?」
「そうそう。リリアンヌみたいな内も外も魅力的な女性が相手なら、婚約期間もきっととっても楽しかっただろうな」
「んもぉ~っ」
くるくると巻かれた華やかな金髪の持ち主リリアンヌ、彼女が浮気相手だ。
ロッツはリリアンヌに夢中。
私のことなんてもうずっと放置している。
きっともうどうでも良くなったのだろう。
あんな言葉、信じなければ良かった――数えきれないくらいそんな風に思いながら夜を明かしてきた。
だが終焉の時は近い。
なぜなら彼の浮気の証拠は日に日に集まってきているのだ。
――それが集まりきったなら、その時、私は彼に終焉をもたらす。
「ロッツくん、君に話があるんだ」
「あ! ローズさんのお父さん! どうされました?」
婚約破棄への第一歩を踏み出す瞬間は父に頼んだ。
「何をへらへらしている」
「……え?」
「君は我が娘と婚約しながら他の女と親しくしているそうじゃないか」
徐々に状況を呑み込み始めるロッツ。
顔がみるみる青ざめてゆく。
「最低な男だな、君は」
その時になってすべてを理解したロッツは「ち、違うんです!」とか「誤解なんです! ちょっとした出来事をローズさんが勘違いなさっただけで!」とか「彼女とはそういう関係ではありません!」とか慌てて発するけれど、もはや手遅れである。
「――ということで、君と我が娘との婚約は破棄とする」
父ははっきりと宣言してくれた。
「娘を傷つけるような男に娘の生涯を託すことはできない」
こうして私と彼の関係は終わったのだった。
当然だが、こうして一人の人間を傷つけたロッツとリリアンヌへは、今後しっかりと慰謝料の支払いを求めるつもりだ。
◆
――あっという間に数年が経った。
あの後少しして良き人と巡り会うことができた私はその人と結婚した。
そして今は第一子の誕生を心待ちにしつつ穏やかな日々を夫であるその人と共に楽しんでいる。
ちなみにロッツとリリアンヌはというと、私への慰謝料支払いの件で大喧嘩になりそれぞれ渋々支払いはしたもののその後殴り合いになってしまったそうで、その際リリアンヌは鼻の骨を折る怪我をし、ロッツは後頭部を打って落命してしまったそうだ。
◆終わり◆




