皆から称賛される美貌と知性とその他諸々の持ち主マリーは、なぜか婚約者だけには愛されていません。~二人のその後、明暗~
「マリーって、とっても美しいわよね」
「今日も煌めいてる! マリー最高! これからもずっと宝石のような輝きを放っていてね!」
「知性を感じる美女だよなぁ。もう本当に……素晴らしいっていうか。女から見ても花咲くような女なんだよなぁ」
「愛してるっ、同性だけどそう言いたくなっちゃうっ、本当にっ」
良家の娘であるマリーは皆から称賛される美貌と知性とその他諸々の持ち主である。
だが婚約者である男性オッズ・ローウェンだけは彼女のことを良く思っておらず、彼女に対して批判的な考えを持っている。
オッズはマリーを見るたび「俺は君を愛さないからな」とか「俺は君みたいな形だけの女に騙される馬鹿じゃないんだよ」とか冷たさのある攻撃的な言葉を放つのだ。
ただ、その程度のことで怒るような心の狭いマリーではなかったので、特に喧嘩になることはなかった。
――彼が一線を越えるまでは。
ある時オッズはマリーに関する嘘の情報を言いふらし始めた。
偽者の、何の根拠もない、事実からかけ離れた悪い情報を流し――しかしそれがマリーの父親の怒りを爆発させることとなる。
マリーの父親は激怒。
オッズのもとへ自ら赴いて色々な面から問い詰めたうえ嘘を言いふらすという悪行を強く批判した。
するとやがてオッズは「そんな言われるなら婚約破棄しますよ!」と言い返した、が、その瞬間マリーの父親が素早く「娘と君の婚約は破棄とする!」と先手を打った。
そうしてオッズが捨てられる形となったのであった。
その後マリーは国を代表するスターにまで上り詰めることとなる。
婚約破棄から一年二年ほど。
あっという間に彼女の存在は全国民が知るくらいにまで成長したのであった。
一方でオッズは落ちぶれた。
婚約者の悪い情報、それも嘘のものを、周りに広めようとした。その事実が明るみに出てしまったため、彼はそういう人間であると大勢から知られることとなってしまったのだ。
友人は減り。
親戚からは冷たい目で見られるようになり。
彼の周囲には人がいなくなった。
また彼は両親からも強く叱られ家から追い出された。
そんなオッズは、婚約破棄から半年ほども経たないうちに、家を持たず日々の食べ物も通行人に土下座して頼んで貰うしかないような生活へと堕ちていったのだった。
◆終わり◆




