不安を抱えやすい女でしたが、奇跡によって唯一無二の存在になることができました。
幼い頃から不安を過剰に抱えることの多かった私は、そんな特性ゆえに婚約者ローベン・ウーリローズベンから良く思われていなかった。
憂鬱を絵に描いたような女、と呼ばれ、たびたび馬鹿にするような言葉をかけられていた。
だがそんなある日ローベンは突然私の前に現れて。
「お前との婚約だが、破棄とすることにした」
彼はそんな重要なことをさらりと口から出した。
すぐには理解できなくて。
何が何だか分からなくて。
どんな反応をすれば良いのか、どんな言葉を発するべきなのか、それすら分からず何も言えないまま。
「じゃあな。ばいばい、愚女」
一方的に関係を終わらせられてしまったのだった。
私は暗闇に落とされたような気になった。
彼をそこまで深く愛していたわけではなかったけれどそれでも急に切り捨てられるというのは悲しかったのだ。
光を求めようと面を持ち上げることさえできず。
心は日に日に沈んでゆくばかり。
何度も死んでしまおうとして。
そんなある朝、私は気づいた。
「え……これって……」
というのも、昨夜死を選んだはずだったのになぜか生きていたのだ。
――私は不死になっていた。
「うそ……でしょ、こんなの……」
信じられないような本当のこと。
奇跡が起こっていた。
知らぬ間に。
そして私は不死という力を手に入れていたのだった。
「死ねないってこと……?」
◆
あれから三百年。
あの時不死という唯一無二の才能を得た私は、今もこの世界で生きている。
私は今、世界の王だ。
すべてを統べる。
すべての上に立つ者。
そして誰からも尊敬されている。
今や誰も私を悪く言うことはしないし無礼な言葉をかけてくる者もいない。
私はこれからも世界を護り続ける。
……ああそうだ、そういえば、ずっと前のことだけれど私との婚約を身勝手に破棄したローベンのその後について少しだけ話そう。
彼は婚約破棄後間もなく山歩き中に獣を仕留めるための罠に誤って引っかかってしまったそうでそれによって落命することとなったそうだ。
ローベンは不思議なくらいあっさりとこの世を去ったのである。
◆終わり◆




