とても魅力的な同性の友人がいるのですが、彼女はなぜか男運が悪いです。~幸せになってほしいので私が頑張ろうと思います~
お金持ちの家の娘で幼馴染みであるエリーナは同性の私から見てもとても美しくて心優しい素敵な女性なのだが、なぜか男運に恵まれず、既に何回も婚約者から理不尽な婚約破棄を言いわたされている。
ある人には「面白みがない」と言われ婚約破棄され、ある人には浮気されたうえ暴言を吐かれて婚約破棄された。また、とある人には嘘をつかれ騙されかけたうえ婚約破棄され、そしてまた別のとある人には「尽くされるのも鬱陶しい」などと言われて婚約破棄された。
そしてまた――。
「聞いて、ローズ。また婚約破棄されちゃった……」
「えっ」
「幼馴染みの方が好きだからって……うう、婚約破棄を告げられてしまったの……」
エリーナは最新の婚約者にも婚約破棄されてしまった。
もうこういうことは何回もあった。
でもなぜそんなことになっているのかは謎のままだ。
友である私には心当たりがない。
「幼馴染みの方が好き、って、失礼じゃない?」
「泣きそう……」
「そんな失礼な人、放っておいたらいいじゃない。そんな人と一緒にいても幸せになんてなれないから」
「……た、確かに!」
「そうでしょ? エリーナを幸せにしてくれる人と一緒に生きるべきだと私は思うの」
その時私はふと思いついて。
「というか、もしよかったらなんだけど……私と生きていく?」
ぽろりとこぼすように。
思いついた案を口から出した。
「え――」
エリーナは驚いた顔をして硬直したけれど。
「い、いいの!?」
数十秒ほどの停止の後に両手の手のひらを胸の前で合わせながら発した。
エリーナは満面の笑み。
元より整っていて美しい面に無数の花が咲き乱されるかのようだ。
「ローズ、それ、本気で言ってくれてる!?」
「ま、まぁ……ふと思いついたアイデアではある、んだけど……」
思いの外食いついてこられて正直驚いている。
「それ素敵ね!」
だがそれは完全な冗談ではないのだ。
なんせ私はそれほどにエリーナのことを大切に思っているのだから。
「そうしましょう!」
「ほ、本気なの?」
「あ……あの、やっぱり……もしかして、社交辞令だった……?」
「いやべつにそうではないけれど」
「ならいいわね?」
「う、うん。エリーナのこと好きだし。いいよ」
「わぁ! 嬉しいわ、ありがとうローズ。じゃ、決まりね!」
こうして思わぬ展開へと運命が進んでゆくこととなった。
◆
あれから数年が経った。
私は今エリーナと一緒に一つの屋根の下で暮らしている。
女性同士のパートナー関係というのはこの国ではまだまだ珍しい事例だ。しかし幸い周囲にはそれを否定する人はいなかった。なので今はとても楽しく幸せに暮らせている。生活費はエリーナのおかげで困らないし、良いことづくめだ。
そうそう、そういえば。
かつて「面白みがない」とエリーナとの婚約を破棄した男性は、買い物中に急に体調を崩して倒れ、そのまま亡くなったそうだ。
浮気したうえ暴言を吐いて婚約破棄したその人は、浮気相手に子が宿り渋々婚約するもその間にまた別の女性と親しくなって浮気したために婚約者の兄に激怒され、殴られて落命してしまったらしい。
嘘をついてエリーナを騙そうとしたうえ上手くいかなくなると婚約破棄した男性は、後に詐欺罪で捕まり牢屋送りとなっているそう。
そして「尽くされるのも鬱陶しい」などと贅沢を言って一方的に婚約破棄した青年は、兄の借金のせいで売り飛ばされてしまい奴隷のような扱いを生涯受け続けることが決まってしまったそうだ。
また、幼馴染みの方が好きと言って婚約破棄した最後の男は、友人から貰った手作りお菓子を食べたところ胃腸を調子を悪くしてしまい、その不調をこじらせてしまったために落命したのだとか。
エリーナを傷つけた男たちは誰一人幸せにはなれなかった。
◆終わり◆




