婚約者が婚約とほぼ同時に実家暮らしを求めてきたので仕方なく受け入れたのですが……。~穏やかな未来を掴みたいのです~
婚約者リューゼーンは婚約とほぼ同時に実家暮らしを求めてきた。
仕方がないので私はそれを受け入れた。
そして彼の実家へと移り住む。
彼がどうしてもそれがいいと言うのでなるべく協力しようと考えていたのだ。
しかし、いざ実際に実家へ行くと、そこでは最悪な出来事が待っていた。
ヒステリックな彼の母親はことあるごとに乱暴な言葉をかけてくる。やたらと命令してくるし、奴隷扱いしてくるし。加えて、たびたび私の人格や存在そのものを悪く言ってくるのだ。彼女は私を虐げる対象としか捉えていないようであった。
しかも、リューゼーンと彼の父親は、そんな彼女を悪行を見てみぬふり。
彼女が私を虐めていても酷いことをしていても気づかないふりをし続けていた。
そんなある日。
彼の母親に命令されて買い物へ行かされることに。
「一刻も早く帰ってくるのよ! ほら、さっさと行って! それでさっさと帰ってきさない! ……いいわね? 少しでもさぼっていたことがばれたら痛い目に遭うわよ。分かっていて? 数秒でも足を休めたり休憩したりしていたら……血まみれになるまで罰っするから。覚悟なさい! それが嫌なら、きちんと指示通りに買って帰ることね!」
――だが、私が買い物に行っているその間に、リューゼーンの実家に落石が命中する事件が発生。
それによってリューゼーンとその母親は落命した。
……父親だけは家にいなかったために生き延びたようだが。
こうして婚約者があの世へ逝くこととなってしまった私は、婚約をほぼ自動で破棄することに成功し、おかげで自由を手に入れたのだった。
これでもう自由!
嫌がらせに耐える必要もない!
ああ、なんて、嬉しいのだろう。
虐めから解放されるなんて最高以外の何物でもない!
私はもう自由。
誰にも指図されない。
◆
リューゼーンとの婚約が破棄となった後、私は、親の紹介で知り合った青年ルルド・アイントベールと仲良くなって婚約した。
婚約期間は順調に進んで。
後に正式に夫婦となる。
「また早く起きちゃった~」
「おはようルルド」
それから数年が経ったけれど。
「最近さぁ、いっつも早く起きちゃって、困ってるんだ」
「自由時間を得られたと思えばいいじゃない」
今でも私たち二人は仲良しだ。
「まぁ、確かに、そうだけど……」
「何か上手く眠れない原因があるの?」
「いやないけど……」
「ならそういう時期なのよ。そう思えばいいんじゃない? 悩み続けたって解決しないのだし」
「ああ! 確かに!」
これからもこんな二人でいられたらいいな、と、純粋に思う。
「でしょう? ハーブティーでも淹れよっか?」
「そんな。申し訳ないよ。迷惑だろうし」
「いいわよ。昨日開けたやつがあるの。良かったら二人で飲みましょう」
「いいの~?」
「もちろん。じゃあ淹れてくるわ。ちょっと待ってて」
「ごめん……」
「謝る必要はないから」
「ありがとう。じゃあその間にちょっとだけ床掃除しておくね」
◆終わり◆




