表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

524/598

婚約破棄したのはそちらですよね。なぜ今さら? 迷惑以外の何物でもありませんので、二度と私の前に現れないでください。

「君ってさぁ、ほーんと、真面目っ子だよね」

「え……と、そうでしょうか」


 婚約者ルートに呼び出されたと思ったら。


「そうそうそういうところ! 女の子にしては真面目過ぎるっていうかさぁ、可愛げがないんだよ可愛げが」


 そんなことを言われてしまって。


「すみません」

「あのさぁ、すみませんとか、そういうこと求めてるんじゃないって分かる?」

「え」

「そんな風に謝られたらさ、こっちが謝らせてるみたいになるだろ? それってほーんと気分悪いから。不快の極みだから。分かってる?」


 あれこれ言われたうえ。


「てことで、婚約は破棄な」


 最後にはそこまで言われてしまった。


 ……いや、きっと、彼は最初からそれを告げるつもりだったのだろう。


 それ以外の言葉はあくまでおまけで。婚約破棄を告げる、それが本題だったのだろうと思われる。悪いところを言うためだけに呼び出すなんて、そんなことは不自然だから。最初から目的としてもっと重要なことがあったはずなのだ。


「婚約破棄……ですか」

「そうそう」

「理由は、先ほどの内容ですか」

「まぁそうだねぇ、そんな感じ、だな! なんせ君と一緒にいてもぜんっぜん楽しくないんだ。そんな女と生涯を共にするなんて絶対に無理」


 こうして婚約は破棄となったのだった。



 ◆



 数日後。

 我が家の庭から金の混じった温泉が湧いた。


「聞いたよ! 温泉湧いたんだって? 凄いね!」

「……今さらどうして」


 途端に現れるルート。

 もう終わったと思っていただけに彼がやって来たことには驚きしかなかった。


「やり直してあげてもいいよ?」

「え」

「金の混じった温泉、きっと高く売れるよね。何ならそこの土地で事業を始めてもいいってことだし。そういうことなら、君と夫婦になってあげるっていうのも悪くはないかなって」


 いやいやいや。

 何を今さら。


 しかも明らかに金目当てではないか。


「いえ、そんな、結構です」


 金になりそうと判断するや否や迫ってくるというのはあまりにも愚かな行動である。


「私はルートさんに相応しい女じゃないですから」

「今なら相応しいよ」

「いえ、本当に、もう来ていただかなくて大丈夫ですので」


 すると急に腕を掴まれてしまう。


「結婚しよう!」

「やめてください」

「結婚! 結婚! 結婚しよう! もう一度やり直すんだ!」


 その力は異様に強くて。


「離してください!!」


 思わず叫んでしまった。


 その後、この騒ぎに気づいて出てきた父が「何をしているんだ! 身勝手な理由で婚約破棄した男が今さら何しに来た! 去れ!」と言ってくれ、そのおかげで何とかルートを追い払うことができた。


 以降、ルートは毎日のように私の家の前に現れて「男を貶めるクソ女!」「ごみ成金!」などといったことを数時間にわたって叫ぶ迷惑行為を続けていたが、ある時私の家のポストを破壊したことで逮捕された。


 ルートの人生は終わった。


 牢屋送りになれば、きっともう、そこから出てくることはできないだろう。



 ◆



 あれから数年、私は、親戚の紹介で知り合った男性と結ばれた。


 今は穏やかに二人で温泉宿を営んでいる。


 ちなみにルートはというと、牢屋に入れられた日からちょうど二ヶ月が経った朝に牢内で謎の死を遂げていたそうだ。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ