悲しいことですが、モルルンセール家の三兄弟は残念ながら誰も幸せにはなれませんでした。
――これは私が知るモルルンセール家の三兄弟の話だ。
長男カイン・モルルンセールは、良家のお嬢様である美しい女性と婚約していた。
しかしある時自分の浮気がばれてしまう。
それによって相手の親から激怒されたのだが、当のカインはというと「自分は悪くない」「婚約者が面白みのない女なのがすべての原因だ」などと言い張り、しまいには一方的に婚約破棄宣言を突きつけた。
その結果、婚約者の女性の親をさらに怒らせてしまって。
最終的にカインが婚約破棄される側となった。
また、多額の慰謝料を請求されることとなり、そんなこともあってカインと両親の関係も悪化。
やがてカインは両親から勘当を言いわたされ、家から出ていかざるを得なくなったのだった。
その後のカインはろくに労働もせず路上で物乞いをしていたそうだが、やがて風邪で亡くなった。
次男カッタ・モルルンセールは、学園時代に知り合った同じ年齢の女性と婚約していた。
彼は女性を深く愛していた。
しかし彼女の心はというと彼の心と同じではなく。
いつの間にか彼女には他に好きな人ができていた。
そして浮気していたのだった。
それによって正常な精神を失ったカッタは、ある晩女性の浮気相手であった男性のもとを訪れ、こっそり所持していたナイフでその男性を再起不能に追い込むほど傷つけた。
カッタは逮捕されてしまう。
また、それによって、女性との婚約は自動的に破棄となった。
浮気されて傷ついたのは理解できるし、浮気相手を痛めつけたいとまで思ってしまったこともまた人の心理としては理解できないことではないのかもしれない。
ただ、彼はやり過ぎた。
人を斬る、などという行為は、理由が何であれ絶対的な悪だ。
それさえしなければカッタは何も悪くなかったのに。
浮気された被害者から犯罪者になってしまうなんて、非常に残念なことである。
三男カティオ・モルルンセールは、親に言われた相手と婚約することとなった。
元々大人しかったカティオは親の指示に従った。
好きでもない人ではあったが素直にその女性と結婚する未来を見つめていた。
だが、いざ婚約してみると、女性はかなり性格が悪くて。
カティオは日々女性から虐められるようになってしまう。
朝から晩まで虐められ続けたカティオは段々心を病んでしまい、いつしか死を願うようになる。
そしてある晩行動に出た。
彼はプレゼントの箱を女性の枕もとへそっと置いて家から脱出すると近くの山へ行ってそこで自ら死を選んだのだ。
それから数時間後の朝、起床したばかりの女性の傍にあった箱が爆発し、女性はそれに巻き込まれて落命した。
――何とも悲しい、誰も幸せになれない、モルルンセール家の息子たちの話。
◆終わり◆




