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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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女連れで婚約破棄したうえいちゃつく姿を見せるなんて……さすがに酷すぎますね。

 前々から感じが悪く、しかも幼馴染みだというリリーナとかいう女ばかり可愛がっていた婚約者エーデルガーが、ある日の晩餐会にて。


「貴様との婚約、破棄とする!!」


 そんなことを宣言してきた。


 しかも、隣にリリーナを置いた状態で。


「エーデルガー様、本当にいいんですかぁ……? リリーナなんかのためにぃ……」

「いいんだ」

「でもぉ……リリーナのせいでぇ……」

「リリーナ、お前は何も悪くないよ。悪いのはダサくてみっともないこの女だけだ」

「えぇ~? それはちょっとぉ……酷くないですかぁ~?」


 私の目の前で堂々といちゃつくエーデルガーとリリーナ。


「真実だから仕方ない。……ああ、それよりも、リリーナと早く結ばれたい」

「んもぉ~、エーデルガー様ったらぁ貪欲ぅ」

「キスしてもいいかい?」

「うそぉ、こんなところでぇ?」

「させてくれ」

「……もぉ、仕方ないですねぇ、いいですよぉ? どうしてもっていうならぁ……」


 しまいに二人は唇を重ねた。


 理解不能な展開を目にして硬直してしまっていると、急にエーデルガーに睨まれる。


「貴様、いつまで見ているつもりだ」

「あ……」

「捨てられた女はさっさと消えろ」


 そうだ、私はもう捨てられた女になってしまっているのだ……。


「酷い男ね、こんなところで婚約破棄するなんて」

「しかも女連れとかないわー」

「あり得ないわ、酷すぎよね。あんなやり方って。公開で、とか、悪魔」

「はあぁ……ひでぇ、ひどすぎぃる……。ありゃ、地獄に落ちるべきすなぁ」


 私に居場所はない。

 黙って去るしか道はない。


 その日私は晩餐会を早退した。



 ◆



 あれから三日。

 意外なことだが、エーデルガーとリリーナはこの世を去った。


 エーデルガーとリリーナは晩餐会の帰り道に事故に遭い、二人まとめて落命することとなったのだった。


 同時に死ねたことは幸せだっただろうか? ……いや、それでも、死は死だ。生きていればいちゃついたり遊びに出掛けたりできたのだから、死が幸せなものであるはずがない。二人で死ねたから幸せ? そんなことはないだろう。この世から去ることを望んでいたならともかく。そうでない者が二人で死ねたから良かったなんて思うはずもない。


 それは私にとって唯一の救いとなった。



 ◆



 あの婚約破棄から数年、私は、この国の第二王子である青年と結婚した。


 夫となった彼は少々臆病なところのある人だ。

 けれども静けさの中にも包み込むような優しさを持っている。


 彼は他者の心を見ることができる人。

 だから私は彼のことが好きなのだ。



◆終わり◆

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