何かサプライズでもあるのかなと思っていたのですが……告げられたのはまさかの!?
私シリニカと彼リリオンは婚約者同士。
年齢は同じだ。
「なぁ、明日さぁ、ちょっと話したいことあるんだけど」
「どうしたの? リリオン」
それはある晴れた日のことだった。
「……明日時間空いてる?」
「ええ。多分。どういう時間、とかある?」
「できれば早朝」
「早朝!?」
「あーうん、ごめんな、悪かったら言ってよ」
「いえいいわよ。じゃあ早朝ね。どこで会う感じ?」
「俺の家」
「リリオンの家ね」
「来てくれる?」
「いいわよ、じゃあ朝に行くわね」
唐突にそんなことを言われて、けれども、深刻な展開なんて少しも想像してはいなくて。
何かサプライズでもあるのかな? なんて思っていた。
――だがそこで待っていたのは。
「シリニカとの婚約は破棄することにしたから」
関係の解消を告げる言葉であった。
「え……」
「君とは生きない」
「な、何で!?」
「嫌だから。君と生きても楽しいことなさそう。未来に希望が持てなくてイライラする」
リリオンは容赦なく心ない言葉を投げつけてくる。
「えええー……」
思わず漏れたのはそんな声だった。
「俺さぁ、もっと輝かしい幸せな未来を掴みたいんだ」
とても、とても、衝撃的な朝。
「だからシリニカと生きるのはやめる」
――こうして私は絶望に堕とされた。
そうだ、もう死んでしまおう……。
私は死を選ぼうとして崖へ向かう。
「何してるんですか!」
だが私は死ねなかった。
というのもたまたま通りかかった青年に止められてしまったのだ。
「駄目ですよ! 死ぬなんて! 生きてください!」
どうしてよ。
なぜ死ぬことさえ許されないの。
言い返したくて、でも、言い返す勇気もなくて。
こうして私は生き延びた。
◆
あの婚約破棄事件から数年。
私は今、死のうとしたところを制止してくれた青年と結ばれ、二人穏やかな日常を謳歌している。
あの時はどうしてと言いたかったけれど。
今は、あの時彼が引き留めてくれたことに心から感謝しているし、彼がこんな私を愛してくれていることへも強い感謝の念を抱いている。
色々あったけれどここまで歩いてきて良かった。
ちなみにリリオンはというと、あの後山登りが趣味になったそうなのだが、とある山で知り合った女性と恋に落ちたがために命を失うこととなってしまったそうだ。
というのも、その女性と一緒に山登りしていた際に何を思ったか途中でキスをしたそうで、その瞬間リリオンが足を踏み外して斜面を転落――そのまま彼はこの世を去ることとなってしまったのだそう。
なんという残念な最期だろう……。
キスなんてそこででなくてもできただろうに。
◆終わり◆




