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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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私たちならきっと幸せな未来を掴める、そう信じていたのですが……?

「やぁミリーナ、久しぶりだね」

「そうですね」

「元気にしていたかい?」

「はい。アルフレットさんこそ、お元気でしたか」

「僕は元気だよ」

「それは良かったです」


 私ミリーナと二つ年上の彼アルフレットは婚約者同士。


 出会いこそ家と家の関わりだったのだけれど、そこから徐々に親しくなって、やがて婚約するに至った。


「今日も良い天気だね」

「そうですね」

「ミリーナは晴れの日好き?」

「はい、好きです。アルフレットさんはどうですか?」

「僕も好きだよ」

「そうなんですね!」

「一緒だね」

「はい。同じで嬉しいです。共通点が見つかった時って何だか嬉しくなるものですよね」

「確かにね」


 私たちならきっと幸せな未来を掴める。

 迷いなくそう信じていた。


「あ、そうだ。話なんだけど。ちょっといいかな」

「何でしょうか」


 ――その、瞬間まで。


「君との婚約だけど、破棄することにしたから」


 アルフレットは柔らかな笑顔のままさらりと述べる。


「え……」


 思わずこぼれてしまう情けない声。


「ミリーナはさ、僕のことそんなに好きじゃないでしょ」

「どうしてですか!? 好きですよ!!」

「でも、好きじゃないよね?」

「好きです!」

「……だとしても、ごめん。僕は君のこと、そこまで好きじゃないんだ。嫌いでもないけど。だから……関係はここまでとさせてもらうよ」


 愕然としているうちに、彼は去っていってしまった。


 あまりにも突然の終わり。

 言葉を失うことしかできない。



 ◆



 あれから数日。

 アルフレットの訃報が届いた。


 彼は女性と二人でお出掛けしていたそうなのだが、お出掛け先で急に体調を崩し、病院へ運ばれるもそのまま落命することとなってしまったそうだ。


 結局原因は不明のままらしい。


 なんということだ……。

 こんな急に亡くなるなんて……。


 ただ、今の私はもう彼の何でもないので、悲しむ必要はない。


 婚約者の急死であれば悲しむのが普通だろう。だが元婚約者の死となればまた別の話で。かつて婚約していた、というだけの私だから、彼の死に涙する必要などありはしないのだ。



 ◆



「それでね、クッキーを焼いたんだけど、爆発しそうになって~」

「ええ!?」

「でも何とかなったよ」


 あれから一年。

 私は近く結婚する予定だ。


「完成したの?」

「美味しくできたよ~。ミリーナにも食べてほしいな」

「いつかいただくわ」

「って言ってもらえるかなって思って、持ってきたんだ~」


 結婚する予定の相手、彼は三つ年上なのだが、少々抜けたところのあるような人物である。


 おっちょこちょいだし。

 おっとりしているし。


 けれどもそんなところも含めて愛らしいと思えるような人だ。


「ほら~」

「わぁ! とっても綺麗ね! 上手じゃない」

「えへへ~」

「食べてみて良いのかしら」

「もちろんだよ」

「じゃあ……早速、いただくわね」

「わぁ~い。ミリーナに食べてもらえるなんて嬉しいな。嫌がられるかもってちょっと不安だったんだよ~」


 どんな時でもにこにこしている彼となら、きっと、のんびりとした穏やかな幸福を堪能できるだろうと思う。


「……美味しい!」

「ほんと~?」

「ええ、とっても! 爆発しかけたのにこの美味しさって、凄い!」

「嬉しいな」

「貴方ってほんとお菓子作るの得意ね」

「えへへ、照れるな~」


 過去は捨てて。

 未来へと手を伸ばす。


 それが私の人生、生き方だ。



◆終わり◆

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