最後に幸せになるのはどちらでしょうね? ~上から目線であれこれ言っているだけでは偉大な人間にはなれませんよ~
学園卒業後、会社に就職して働いていた私は、気づけば一般的な女性の結婚する年齢を超えていた。
それで慌てた親から一人の男性を勧められ婚約する。
相手は五つ年上で名はルレットという。
彼はそこそこ良い家の出ではあるのだが、少々性格に癖のある人らしく、ゆえに若干婚期を逃しつつあるということであった。
だがそのくらいなら受け入れようと思っていた。
何事もある程度許すことが大切だ。
事あるごとに細かいところまで指摘しているようではきりがない。
……しかし彼はかなり理解できない人であった。
初対面でいきなり「巨乳になる努力する気はあるのかい?」などと言われて引いてしまったし、少しお茶をすれば「僕と婚約するからには素敵な女性になってもらうよ。もっと女性としてもレベルを高めて」などと上から目線な発言を繰り返されるのでうんざり。
しまいには「君は完全に行き遅れだよね」とか「君さぁ、もっと男に媚びる努力したほうがいいよぉ?」とかそんな失礼なことばかり言ってくる始末。
――だがそんなある日、彼から、突如婚約破棄を告げられた。
「君はさぁ、僕には相応しくないと思うな。っていうか、僕に相応しい女性になれないよね? 君。そうなる努力さえほとんどしていないみたいだし。だからもう終わりにしよう? 君には僕の隣にいる資格がないよ。分かったね?」
こうして私たちの関係はあっさりと終わってしまったのだった。
◆
あの後間もなくルレットはこの世を去った。
夜に公園を散歩していたところ不良風な身形の若者数名に取り囲まれ、殴る蹴るなどの被害を受け、身に着けていたものをすべて剥ぎ取られてしまったのだそうだ。
その際の怪我により生存不能となってしまっての死だったらしい。
少々理不尽な気もするが……。
だが、まぁ、過去の彼の振る舞いを思い出せば――可哀想という気持ちはしぼんでゆくばかりである。
一方私はというと、勤めていた会社にて女性初の社長となった。
長年の働きが認められた形だ。
地味なことばかりであっても努力した日々は無駄ではなかった。
ちなみにもうすぐ結婚もする予定だ。
これからもできることは常に全力で。
そうやってより幸せな道を掴み歩んでゆきたい。
◆終わり◆




