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あなたを愛していました。けれどももういつまでもあなたに縛られている気はありません。

　わたしはあなたを愛していた。

　だからこそ婚約したのよ。

　あなたと共に生きてゆきたいとそう思ったから。

　でも、あなたはそうじゃなかったのね。

　ずっと気づいていなかった。あなたもわたしと同じような心でいるのだと、わたしたち二人同じ方向を見つめているのだと、そう思っていたの。けれどもそれは間違いで。わたしの勝手な思い込みだったのね。

　――あなたはわたしではない女性を見ていた。

　だから婚約破棄したのでしょう？

　とても悲しいわ。

　とても切ないわ。

　ただ、比較的早く、結婚してしまう前にそのことに気づけたことは不幸中の幸いであったと思うの。

　だって、いざ夫婦になってから、あなたがわたしを見ていないことに気づいたら――そんなのはあまりにも辛いじゃない。

　そういう意味では婚約破棄してもらえたことに意味はあったのかもしれない。

　すべて過ぎ去った今はそんな風に思うわ。

　悲しみも、切なさも、無駄ではなかったのだと……今はそう思えるの。

　けれどもあなたへの黒い感情は消えないわ。

　あなたはわたしを切り捨てた。

　その事実は永遠に変わらない。

　ゆえに、わたしがあなたへ抱いているこの毒々しい感情はきっと一生消えないものよ。

　でもいいの。

　わたしはわたしで新しい道へと進むつもりだから。

　……さようなら、愛していたあなた。

　あなたがあなたの道を選んだように。

　わたしもわたしの道を選んでゆく。

　それぞれの道を行きましょう、きっとそれが最良の人生。

◆終わり◆