妹に惚れたからと婚約破棄されました。~私の妹は最高で最強です~
「妹さんに惚れたんだ。なので君とはもうおしまいにする。婚約は破棄とする」
婚約者ルローフはある日突然そんなことを告げてきた。
まさかの展開に愕然とすることしかできなくて。
それでも私はすっとするような反撃をすることはできなかった。
弱い自分が情けない……。
だが仕方ないのだ。私はこういう人間だから。いきなり強い人間になんてなれはしない、残念だがそれが事実で現実なのだ。
――その話を妹ネネにしてみると。
「はぁ!? 何それ! サイテーじゃん!!」
そんな風に言ってくれて。
「もしそいつがあたしに絡んできたらハッキリ言ってやるから!」
「ありがとう……」
「ね? もう気にしちゃ駄目だよ?」
「うん。元気出てきた。ありがとう、嬉しい」
あれから数日。
その日はいきなりやって来た。
「ネネさん、好きです! 俺と婚約してください!」
ルローフは妹の前に現れ、想いを告げたのだ。
「あの、姉の婚約者だった方ですよね?」
「え……」
「そうですよね?」
「ぁ……は、はい」
「すみませんが、あたし、姉の元婚約者と関わる気はありませんので」
ネネははっきりと言ってくれる。
「姉から聞いています。妹に惚れたから、と、婚約破棄されたと。そういう人はあたしは無理です。なので貴方と関わる気は一切ありません」
「な、なぜ!? 俺は裕福ですよ!?」
「そういう問題ではありません。裕福なだけで女を好きなようにできると思っているのならそれは間違いです。たとえ裕福であっても、身勝手に人を傷つけるような人には良い印象を抱かないものです」
別れしなネネは「二度とあたしの前に現れないでください」とまで言ってくれたのだった。
「あれで良かった? 姉さん」
「ありがとうネネ!」
「力になれたなら良かった」
「本当に頼もしいーっ!!」
「はいはい。大袈裟だって。また何かあったら言って」
「ネネ最高! ネネ最強!」
その後、一ヶ月も経たず、ルローフはこの世を去った。
何でも勝手な婚約破棄の件で親に叱られたそうで。
それを苦に自らこの世を去ることを選んだそうだ。
あれから数年。
私は親戚の人の紹介で知り合った男性と結婚し家庭に入った。
妹は職場の知り合いと結婚したが現在もまだややスローペースではあるが仕事を続けている。
そして、私たち二人の関係は良好だ。
毎日は会えないけれど。
定期的に顔を合わせて日常のいろんなことを話したり美味しいものを食べたりしている。
いつまでもこんな関係の姉妹でいられたらいいな、というのが、私の本音だ。
◆終わり◆




