「お前のような魅力のない女と結婚する気はない! よって、婚約は破棄とする!」ティータイムイベントの最中、そんなことを言われてしまいました。
「お前のような魅力のない女と結婚する気はない! よって、婚約は破棄とする!」
その日はとあるティータイムイベントに婚約者ルルドフと一緒に参加していた。
しかしその最中にルルドフは関係の終わりを告げてきて。
知り合いですらない大勢の他人の前で婚約破棄を告げることによって恥を掻かせようとしてきたのだ。
「本気で仰っているのですか?」
「ああ本気に決まってる」
だがそんな手に素直に乗ってあげる気はさらさらない。
「そうですか、そんな風に契約違反されるなんて残念です」
「はぁ? 何様のつもりだ! ふざけやがって!」
私には剣がある――そう、それは、私ではなく彼に恥を掻かせる策。
「では然るべき対応をさせていただきます」
「何言ってるんだお前。ああそうか、負け惜しみだな? 悔しがっているのだな? はは! だとしたらそういう振る舞いはお前にぴったりだ!」
ルルドフは何やら楽しそうだがそんな彼をまともに相手する気はさらさらない。
私が今すべきことは恥の掻かせ合いという意味で反撃することだけである。
「るるぶぶるるぶるるぶるぶるるるるるぶるるぶるるるるぶぶるるぶぶぶぶぶるぶるぶるぶぶるるるるぶぶぶるるる!!」
呪文を最後まで唱えると――あっという間にルルドフはパンツ一枚になってしまった。
……そう、これは、衣服を剥ぎ取る呪文なのである。
「きゃああああ! 何あの人、裸とかキモぉぉぉぉぉい!」
「うわっ……」
「あり得ないわ! 誰か! ちょっと誰か! アイツ摘まみ出しなさいよっ」
会場内で騒ぎが起こる。
そうしてルルドフは、いきなり服を脱いだ不審者として警備兵に連れ出されたのだった。
「何あれ、凄かったわね……」
「公の場で服を脱ぐなんてきついわ」
「そうよねぇ~。変だと思うわぁ~。だってぇ、誰も服を脱いでなんて頼んでいないのにぃ~。ねぇ~」
ルルドフの評判は一気に低下した。
◆
あの後、ルルドフがティータイムイベント中に急に脱衣したというニュースが広く流れ、それによってルルドフは失職した。というのも、彼が勤めていた会社の社長が激怒したそうなのだ。そのような不審者を置いてはおけない、と言い、社長はルルドフをクビにしたそうだ。また、近所の人たちからの目も冷たくなってしまい、それによって一家で引っ越すことを余儀なくされてしまったらしい。
ルルドフに明るい未来はなかった。
一方私はというと、ルルドフとの婚約こそ壊れてしまったけれどその後知り合ったエリート好青年と親しくなり結婚するに至った。
今は彼と夫婦として穏やかな日々を楽しんでいるところだ。
これから先、きっと、時に困難もあるだろう。
けれどそれも彼となら乗り越えてゆけるはず。
だから今は未来を心配してはいない。
◆終わり◆




