貴様のようなパッとしない女を妻とする気はさらさらない、ですか? そうですか、それではさようなら。
「貴様のようなパッとしない女を妻とする気はさらさらない! よって、婚約は破棄とする!」
婚約者フルーデン・フルト・フォフルトディトディリオーンズはある日突然そんな宣言をしてきた。
二人で参加していた催し物の最中に、である。
「俺は貴様みたいな女は相手にしない」
「本気で仰っているのですか?」
「当たり前だろう! 俺を愚弄するつもりか!? 馬鹿め! ……まぁいい、どのみち貴様のような女は捨てる気だったのだ、今さら怒る労力を割くなど完全に無駄な行為だ」
こうして私は一方的に切り捨てられたのだった。
なんという身勝手な男……。
どうしてそこまで自己中心的になれるのか……。
呆れて、言葉が出ない。
だがもうフルーデンとの関係は終わったのだ。
ゆえに彼について考える必要はない。
だからここですべておしまいとしよう。
フルーデンは私の人生から消えたのだ。
◆
あれから数ヶ月。
フルーデンは投資詐欺の被害に遭いそのショックによって自ら死を選んだそうだ。
何でも、彼には好きになった女性がいて、その女性に誘われた投資を始めたそうだったのだが――それは実は罠、詐欺であったようで――そうして彼は身を亡ぼすこととなったそうなのである。
可哀想だろうか? ……まぁ、一般的な理論で考えればそうなのだろう。騙され、失い、そんなことになってしまうなんて可哀想というか気の毒というか。だが彼の場合は? 一方的に切り捨ててきたあんな悪しき男が被害者であったら? 可哀想、と、純粋に捉えることはできない。なんせ彼自体に悪の要素が強いから。善良な人物が騙されて損をするのと同じ話ではないだろう? そういうものだと私は思う。ゆえに、可哀想とは思えない。
……残念ながらフルーデンには明るい未来はなかったようだ。
◆
「花、咲いたんだね」
「ええ」
あれから数年、私は富裕層の出で本人も仕事で成功して裕福なロリッツと結婚した。
「僕の好きな花だよ」
「そうね、前にそう聞いたから」
「もしかしてそれで選んでくれたのかい!?」
「そうよ。ロリッツの好きな花。いつか育ててみたいと思っていたの」
窓の外にある花壇には色とりどりの花が咲いている。
それは私が育てているものだ。
前から花が好きな彼に喜んでほしくて。
「そうだったんだ……」
「どう? 少しは癒されそう?」
「もちろん! 嬉しいよ!」
「なら良かった。少しでも力になれたらって思っていて、それで……好きだと聞いていた品種を育ててみていたの」
◆終わり◆




