婚約破棄宣言された雨の日のことです。~こんな時こそ舞いたいです~
婚約者ルリーフに婚約破棄宣言をされてしまった。
何でも彼は私のことを好きでいられなくなったそう。
それで関係を終わらせるという決意を固めたのだそうだ。
一度した約束を叩き壊さなくてはならないほどの好きでいられなさ、というのは私には想像できないのだけれど、彼の中ではとても重く大きなことだったのだろう。
そうして雨の日に切り捨てられた私は、悲しみの海に溺れそうで、家から少し離れたところにある日頃あまり行くことのない公園へと向かった。
ベンチに腰を下ろす。
ただ雨音だけが響いている。
そこには誰もいない。
――よし、こういう時は。
涙が止まらないままではどうしようもないので、一人、その場で立ち上がる。
そして天を仰いで。
「あ~っめ! あ~っめっめ! ぁああああぁぁぁぁぁ~っめめめ!」
腕を突き上げる。
「あめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめふるあめきた」
そして足を動かす。
「あめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめふったあめがあめきたあめきたあめふったあめがあめきたあめきたあめきたあめきた」
ステップを踏み、雨降りの中で舞う。
「あ~っめ! ああ~っ、めっめめめ! あ~っめっめめめ! あ~、めっめめめ! あ~め! あ~め! ああぁぁぁぁ~、めぇ!!」
ルリーフとは終わったのだ。
もう彼のことは考えない。
なぜなら考えても意味がないから。
「あめきたあめきたあめきたあめきたあめふるふるあめあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめふるあめあめあめきたあめきたあめきたあめきたあめふったあめが」
呪文のようにテンポ良く唱えつつ踊る。
もう何も隠さない。
どのみち誰も見ていないのだから。
「あめふるあめがふるあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめふったなあめあめきたあめきたあめきたあめきた」
徐々に乗ってくる。
悲しみが溶けてゆく。
肌を濡らす雨粒たちと一体化するかのようだ。
「あめきたあめきたあめきったたあめきったあめきたったあめきたあめきたふってたあめふってるふったふったあめがあめがふるふるあめふるあめふるふるふるあめふったあめきた」
すべてを解放して。
「あめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめきたあめふってあめふったあめふるあめふるあめきたあめきたあめきた……あめきたぁ~めぇッ!!」
何一つ隠さずに。
◆
あれから五十年。
私は良き夫と巡り会えた。
そして今は五人の子と七十五人の孫に囲まれて生活している。
賑やかすぎる時もあるけれど、とても楽しい日々である。
ちなみにルリーフはというと。
あの後少しして謎の病にかかってしまい亡くなったそうだ。
◆終わり◆




