三つ年上の婚約者がいて、関係は悪くはないと思っていたのですが、茶会の場でいきなり……。
婚約者アベリールは私より三つ年上。
しかしあまり年上という感じではなかったりする。
けれどもそれが嫌というわけでもなくて。
それゆえ、そういった点についてはあまり気にすることなく、歩んできた。
「おはようリア」
「おはようございます、アベリールさん」
朝の挨拶を交わす。
今日は茶会の準備のために二人揃って会場へ行っているのだ。
「眠そうだね、リア」
「はい。まだ少し眠いです。いつもはもう少し遅い起床なので」
「それは僕もだよ」
「ではアベリールさんも眠いですか?」
「そうだね。眠いよ。でも準備はしっかりしないとね。僕なりに頑張るから、リア、よろしく」
「あ、はい。私も頑張ります。よろしくお願いします」
お互い眠くてまだ本調子ではないけれど、でも、それでも彼となら頑張れる気がする。
「そういえばリア、この前の話だけど」
「何の話でしたっけ」
「美味しいお茶の」
「それですか。新しい紅茶の件ですね」
「あれ、味見してみたよ」
「印象はどうでした?」
「良かった! 特に香りがね。ベリーみたいな甘酸っぱい香りがしたよ」
「嫌ではなかったですか?」
「うん、好きだよ」
「それは良かったです……!」
準備を進めつつ、話をする。
なんてことのない会話でも案外楽しかったりするから不思議なものである。
「リアはセンスがあるなって思ってるよ」
「褒めていただけて嬉しいです」
「前から思ってたんだけどね? リアなら紅茶屋さんとかなれそうだなって」
「それは……褒め過ぎですよ、さすがに」
「ははは。でもお世辞じゃないよ? 本気で言ってるから。シンプルな感想っていうか、そんな感じだよ」
「評価していただけて嬉しいです。」
――そうして迎えた茶会の場にて、私は婚約破棄された。
アベリールは何の躊躇いもなく私を切り捨てた。
しかも大勢の前で宣言をしたのだ。
まるで恥をかかせることが目的であったかのように。
◆
あれから一年半。
私の人生は大きく変わり、今は様々なフレーバーの紅茶を販売する店を立ち上げて日々忙しくしている。
毎日仕事ばかり。
けれども元々好きだった紅茶に携われているので嫌さは少しもない。
実に充実した日々である。
一方アベリールはというと、私との婚約を破棄した翌日自宅の物置にあった開けてはならないと言われている箱を空けてしまったために百六歳になってしまったそうで、それから数日経って老衰で亡くなった。
◆終わり◆




