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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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なんで!? 急に婚約破棄を告げられました。〜彼は意味不明なことをし始めました、理解不能です〜

 私フェリーチェと彼リッドは幼馴染みで婚約者同士。


「フェリーチェさぁ、この前カステラ食べてたじゃん?」

「うん」

「あれ美味かった?」

「美味しかったよ。でもどうしてまたその話? 気になってるとか?」

「今度食べてみよっかなって」

「いいね! 食べてみて食べてみて」


 私たち二人の付き合いは長い。

 し実家が近所だったところから始まったからである。


 物心ついた時には既に知り合っていた。


「どこで買った?」

「普通に町のお菓子屋さん」

「あ、そうなんだ」

「うん。新商品って書いてあったから、多分、これからは入荷するんじゃないかなぁ。限定品って書き方じゃなかったし」

「そういうことなら急いで買いにいかなくても大丈夫そうだな」

「うん、大丈夫と思う」


 それゆえ気を遣うことなく関わり合うことができる。

 そこは良いところだと思う。


「でさぁ、そういえばさ」

「何?」


 一緒にいるにしても、喋るにしても、いちいち気を遣うというのは疲れるものだ。それがないというのは付き合いが長いことの利点。幼馴染みとの婚約というのは、燃え上がるような恋ではないが、それとはまた違った良い点もあるものなのだ。


「フェリーチェ前言ってただろ、バス停の」

「貼り紙の話?」

「それそれ」

「えー。それもうだいぶ前の話だけど。今になってその話? どうしたの」

「貼り紙の絵、可愛かったな」

「今さら気づいたの!?」

「この前久々にバス停使ったんだけどさ、ついうっかり乗り過ごして。それで暇だったから見てた。そしたら絵が意外と良くてさ」

「あれ描いたの私」

「地味にやるなフェリーチェ」

「ありがとー」


 これからもこんな感じでやっていけたらいいなと思う。

 それが私の素直な気持ちだ。

 好き、とか、愛してる、とか、そんな感情はまだ抱けないけれど……そこはそんなに気にしない。


 結婚するなら安定感は大事だ。


「思ったより画力高かった」

「そう? ありがと」

「あれ自力で描けるのは凄いと思ったから、一応伝えとこうと思って」

「褒めてもらえるのは素直に嬉しい」

「やるなぁフェリーチェ」

「でもちょっと恥ずかしいかも。照れちゃう」

「フェリーチェらしくないなぁ……」

「な、何よ! 照れたら駄目!? 私だって照れることあるから!」

「うそうそ、冗談」

「あーよかった」


 そんな風に普通の会話をしていたのだが。


「あ、そうそう。フェリーチェとの婚約、破棄することにしたから」


 リッドはさらりとそんなことを言ってきて。


「え……」

「ごめんな急に。じゃ、そういうことなんで。ばいばいフェリーチェ」

「ちょっと待って、何それ」


 すぐには理解できずにいたのだが。


「さよならフェリーチェばいばいフェリーチェさよならフェリーチェばいばいフェリーチェとわにさよならフェリーチェさよならフェリーチェえいえんにさよならフェリーチェえいえんにばいばいフェリーチェさよならばいばいさよならフェリーチェばいばいさよならばいばいフェリーチェさよなららららららフェリーチェばいばいいいいいフェリーチェさよなららららららフェリーチェばいばいいいいいフェリーチェとわにさよならフェリーチェとわにばいばいいいいいフェリーチェらいせでもさよならフェリーチェらいせでもばいばいフェリーチェらいせでもさよなららららららららららららららららららららららららららフェリーチェえいえんのさよならららフェリーチェばいばいばいばいばいばいばいばいばいばいフェリーチェばいばいばいばいばいばいフェリーチェばいばいフェリーチェさよならばいばいフェリーチェえいえんにばいばいフェリーチェ」


 彼はよく分からないことを言っていた。



 ◆



 あの後リッドは笹を食べるという奇行に出て毒虫に刺されたことによって亡くなった。


 私フェリーチェは資産家の男性と結ばれ幸せに暮らしている。



◆終わり◆

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