身勝手な婚約破棄だけでも問題だというのに、侮辱までするのですか? ……人間性にかなりの問題があると思いますが。
「お前との婚約なんざなぁ、破棄するんじゃ!」
婚約するまでは親切に接してくれていたし色々良いことを言ってくれていた婚約者ミンクだが婚約してからは急激に心ない接し方をしてくるようになっていた――そしてついにその時がやって来てしまう。
「婚約破棄? 本気なのですか」
「あったりまえだろが!」
「ええっ……。さすがにいきなり過ぎません……?」
「知るかぼけぇ!」
もう既に知っていた。
とうに気づいていた。
だが心のどこかでは勘違いかもしれないと信じていたのだけれど、そんな生温いものではなかったのだと改めて突きつけられる。
「お前みたいな女くそなんじゃ!」
「あの、ちょっと、それはさすがに酷くないですか……?」
「うるせぇ黙ってろや地味女」
「暴言を吐くのはどうかと思います」
「知るか! てゆーか、これは暴言とかじゃねぇ! 単なる正直な思いじゃろがぼけぇ!」
ミンクはどこまでも心ない人だった。
私のことを愛していないというのは分かる。
人間誰しもすべての人を愛せるわけではないから仕方ない。
だが、好みでないから好きになれないからと、好き放題暴言を吐くのはどうなのだろうか。
さすがにそれは問題があると思うのだが。
「まずなぁ、お前みたいな地味でパッとしねぇ女はくだらねぇんじゃ。女ならもっと派手に咲く花のようでねぇとなぁ。絶世の美女でもねぇ、ふっつーすぎるくせにご奉仕の精神もねぇたぁ女として最低な輩じゃろが」
こうしてミンクは私を切り捨てたのだった。
◆
婚約破棄から三週間ほどが経った。
「聞いた? ミンクさん逮捕されたそうよ」
「うっそぉ、そんなのやばいわ」
「痴漢ですって」
「ひぃぃ」
「キモすぎるでしょ」
ミンクは街をうろついていた時に好みの女性を見かけて身体を触ってしまい、それによって逮捕された。
「こわぁい」
「そんな人、現実にもいるんですね。信じられません」
「しかも逮捕されてるって、ダッサー」
そんなこともありミンクは今は街の笑い者である。
「好みの女性がいたからっていきなりしかも勝手に触るとかないっすね。何事にも手順ってもんがあるっしょ」
「そうよねぇ、痴漢は駄目だわぁ」
「サイテーッ」
「あの顔、よくよく考えたら変なこと考えてそうな顔よね」
「きたねぇやつ」
ちなみに、牢屋送りになったミンクは、周囲から常に馬鹿にしたように嗤われる生活をしているせいで心を病みつつあるらしい。
もっとも完全に自業自得なのだが。
「痴漢で逮捕とか、はっずかしー」
「一族の恥じゃね? 恥じゃね? まじでやばくね? なぁ?」
「うけたわ」
「息子が痴漢ボーイになるなんて、わたしが母親だったら恥ずかし過ぎて生きていけないですね」
ちなみに私はというと、ミンクとの過去は振り切り、新しい道へ進もうとしているところだ。
今は次なる婚約者候補の男性と徐々に親しくなっているところである。
いつかはきっと。
幸せを掴んでみせる。
こんなところで終わりはしないし、あんな理不尽な男に負けるつもりもない。
「どんな教育受けて育ったらそんなことなるんだろ?」
「それな」
「ほんとやばい人ねぇ」
「怖いよぉ、痴漢とか、人として終わってるよぉ」
◆終わり◆




