「お前さぁ、ホント可愛くねぇからさぁ、婚約破棄するわ」いきなりそんなことを言い出すなんて、どうかしていると思います。
「お前さぁ、ホント可愛くねぇからさぁ、婚約破棄するわ」
婚約者ロガートは金髪に包まれた頭を掻きながらそんなことを言ってくる。
「え……」
「はぁ? 何びっくりしてんの? あっほぉ! お前、自分が可愛くないことにさえ気づいてねぇのかぁ?」
「そういう問題ではありません。婚約を一方的に破棄するなんて、あまりにも身勝手です。問題だと思います」
しかも、意見を述べると、頬を張られた。
「ッ……」
ロガートは私が思っているより暴力的な男だった。
「お前なんてなぁ! 要らねぇんだよ! 価値ねぇんだアホ女!」
怒鳴られて、それで、関係は終わりを迎えた。
◆
あれから三ヶ月。
ロガートはこの世を去った。
彼には好きな女性がいたそうなのだが、その女性にやたらと接近し距離を縮めようとしていたところ女性のガラの悪い父親に目をつけられてしまったらしく、ある晩女性を追って歩いていたところいきなり襲いかかられたそうなのだ。
そうして二十発以上殴られた彼は、気を失って倒れ込み、そのまま落命したそうだ。
あまりにも呆気ない最期。
ある意味可哀想にも思えてくるほど。
けれども私からすれば可哀想だとは感じない。
なんせ彼は私の頬を張った男だ。
そんな彼に対して可哀想などという感情を抱くことはないし、もしもそんな感情を抱くとしたらそのこと自体が間違っている。
彼のような優しさの欠片もない人に思いやりを向ける必要などない。
◆終わり◆




