可愛げない、なんて言われ、突然婚約破棄されました。~その果てに待っていたのは幸せに満ちた日々でした~
「お前ってさ、ほんと、可愛げないよな。てことで、婚約は破棄! いいな? じゃ、そういうことなんで。さよなら!」
なんてことのない平凡な日だった。
私は朝早い時間に婚約者から呼び出され、指定の場所へ向かったところ、爽やかな表情でそんなことを言われてしまった。
どうして?
なぜ急に?
聞きたいことはたくさんあったけど、聞かせてはもらえず。
結局そのまま彼とは別れることとなる。
何だったのだろう。あんなに急に婚約破棄だなんて。それも、こちらに何も言わせたくない、というような雰囲気で。どうして彼はあんなに急いでいたのだろう。そういう選択をした理由も雑にしか説明しないままで。
思うことは色々あったけれど。
でも、これ以上考えても答えなんて出ないと分かっていたから、私はそのまま彼の前から去ることにした。
◆
婚約破棄を告げられた日からちょうど一ヶ月が経った日のことだ。
元婚約者である彼がこの世を去ったと知ることとなる。
入ってきた話によれば、彼は二週間ほど前に酒場で知り合った女性に結婚を申し込んだそうなのだが拒否されてしまったそうで、それを苦に自ら死を選んだそうだ。
いきなり婚約破棄されたのって、もしかして……?
そんなことを思ったけれど。
でももう本人はこの世にいないから。
だから本当の答えなんてきっと永遠に手に入らないのだろう。
終わったのだ、すべて。
そう捉えよう。
そう考えよう。
そうすればもう、思い悩むことはない。
◆
「今日も愛しているよ」
「またそれですか……」
「どうしてそんな顔をするんだい? 何か悪いことでもしてしまったかな」
あの後、隣国の王子に見初められた私は、彼と結婚した。
普通の女だった私は今や一国の王子の妻である。
そしていずれはその国の王妃となるであろう。
なんせ彼は国王の長男、第一王子で、将来国王となることが決まっている存在なのだ。
「いえ……」
彼は私を大層可愛がってくれている。
「ならこれからも言いたいことは言うこととさせてもらうよ」
「は、はい」
「……どうしたんだい? 本当に。まだ言いたいことがありそうな顔をしているね? 言いたいことがあるのならば、気を遣わず、言ってごらん」
おかげで今は幸せだ。
「ええと、その、ですね……」
「何でも言って構わないよ」
「恥ずかしいです。ちょっと。愛している、なんて、毎日言われますと……褒めていただけるのは嬉しいことではあるのですが……」
私はこれからもここで生きてゆくつもりだ。
手に入れたものは離さない。
幸せはいつまでもこの胸に置いておく。
「なるほど! そういうことか!」
「申し訳ありません」
「いやいいよ。むしろ本音を言ってもらえて嬉しいよ。もっとも、それによって行動を変える気はないのだけれどね」
◆終わり◆




