婚約者の彼は私のことを良く思ってはいませんでした。~婚約破棄されてもこちらはノーダメージですので~
我が婚約者ミレニドレフは私を良く思ってはいなかった。
それゆえことあるごとにいちゃもんをつけてきて。
彼はたびたび私を悪く言った。
そして時に侮辱するような言葉も並べた。
それほどに、彼は私を嫌っていたのだ。
彼は家の事情も含めてで私と婚約することとなったという部分もあったので、多分、そういうこともあって私という存在を憎く感じていたのだろう。
そんなある日、彼は突然言ってくる。
「お前との婚約だが、破棄とすることにした」
彼には婚約破棄を決める権利などなかったはずだ。
なのに彼は急にそんなことを言い出した。
「婚約破棄? 何を言って……」
「俺は先日愛する人と出会ったんだ」
「愛する……?」
「ああそうだ。俺はある美しい女性に惚れた。だから俺は彼女と共に生きようと決心したんだ」
ミレニドレフはどこまでも身勝手で。
「だからお前とはおしまいにする。婚約は破棄、お前なんかとはもう今日から他人だ。分かったか? じゃあな、ばいばい」
私の心がどうなるかなど一切考えず。
私がどんな思いで今息をしているかに思いを巡らせることも一切ないままで。
「永遠に、さよならだ」
彼は平然と二人の関係を叩き壊したのだった。
その後我が家からの彼の家への支援は途絶え、それによって彼の家は経済的に終わった。
また、そんな大変な状況下で愛した女性から「貧しい家の人は無理」などと言われ拒絶されたミレニドレフは、自ら死を選ぶこととなってしまったようだ。
――ちなみに。
死後ミレニドレフは現代日本という国へと転生したそうだが、そこでは実の両親から虐待を受け学校ではクラスメイトなどから大規模ないじめを受け、と壮絶な人生だったそうである。
――これはある晩にみた夢の中で『転生の女神』と名乗る人ならざる女性から聞いた話である。
◆
あれから数年が経ち、私は、資産家の息子である青年と結婚した。
彼との出会いはとあるパーティーだ。
親戚のお姉さんが怪我で歩きづらくなったためその代わりに参加した王都開催のパーティーにて、彼から声をかけられて、そこから彼との関係関わりは幕開けた。
で、関係を深め、結婚するところにまで至った。
たまたま共通の趣味があったこともあり、私たちが親密になるのに時間はそれほど必要ではなかった。
私はもう過去は振り返らない。
今手にできているもの、それを大事に抱えて、ただ前へと進むだけ。
◆終わり◆




