裏で浮気していた婚約者も、浮気相手である女性も、私は許すことができません。~少しアレですがあの世に送らせていただきます~
「婚約者さんのこと、どうでもいいって本当なの?」
「ああ。当たり前だろ。俺はただ君だけを愛してる……そう、俺が愛している女はアイリーナただ一人だ」
ある日、路上にて、婚約者であるドルジオがアイリーナと呼ぶ女性といちゃついているところを目撃してしまった。
「じゃあ……彼女との関係はそろそろ終わりにしてくれるの?」
「それはまだ無理かもしれない」
「ええ~、どうしてよ」
「色々難しいんだよ、婚約破棄って。手続きとかもあるしな。そういうことだよ」
二人の会話を耳にして、最初はとにかくショックだった。
でも段々ドルジオへの怒りが膨らんできて。
気づけばショックさよりも怒の色の方が強まっていっていて。
――あんな人、呪ってやる。
私の心はいつからか決まっていた。
「ま、あいつとろいからさ、君との関係なんざ気づいてねーだろ」
「本当なの? 女はそういうことには鋭いものよ。……大丈夫なの?」
「あいつに限っては大丈夫だろ、どうせ気づいてねーよ」
今にも爆発してしまいそうな怒りを抱えたまま、私はその場からそっと離れた。
そして呪いを開始。
今回のターゲットはドルジオとアイリーナの二人だ。
二人まとめて地獄へ叩き落す。
――幸せに、笑って、生きているままではいさせない!
◆
アイリーナが可愛がっていたペット数匹が謎の死を遂げた。
最初は小鳥だった。
それはかごから出していないはずだったのにある晩自宅の玄関先で無残に殺されていた。
そして小動物も。
ある昼下がりに続々と倒れそのままあの世へ逝ってしまった。
そんな不気味なことが続いたために体調不良に陥ったアイリーナは、ドルジオとのデートに行けず急遽キャンセルしたが、それによってドルジオと喧嘩になってしまう。
そしてアイリーナとドルジオは破局した。
一方ドルジオはというと、アイリーナと破局した直後からやたらと足の小指を打つようになる。たんすの角、壁の端、などなど。ありとあらゆるところで足の小指を打ってしまう。そんなことが数ヶ月にわたって続いたために、両足だが、彼の小指はぼろぼろになってしまった。
そしてその傷から菌が入って。
体調を崩し、寝込むようになり、その果てに菌のせいか風邪を引いたためかは不明だが死に至った。
◆
二人は死んだ。
私を傷つけたドルジオとアイリーナ、彼らはもうこの世から去った。
もう満足だ。
私とて、誰が相手でも他人の不幸を願うわけではない。
やるべきことはやった。
目的な既に達成された。
私が呪うべき人はもういない。
(これからどうしよう、かな)
すべて終わったので旅に出ることにした。
出発の日、見上げた空は青く澄んで、とても綺麗だった。
それはまるで我が心を鏡に映し出しているかのようであった。
◆終わり◆




