弱虫と罵られ婚約破棄されましたが、それをばねに最強と呼ばれるところまで成長しました! ~もう誰も私のことを弱虫だなんて言えません~
「お前のような弱虫、俺の妻になるには相応しくない。よって! お前との婚約は、本日もって破棄とする!」
婚約者ミドラーからそんなことを言われたのは、私の十八の誕生日であった。
誕生日、それは、本来であれば他のどんな日よりもめでたい日。この日くらいは笑顔で過ごせるだろう、当たり前のようにそう思っていた日である。しかしこの年の誕生日は良きものとはならず。むしろ、彼からの婚約破棄宣言によって、最悪と言いたいほどに悲しく絶望に堕とされる日となってしまった。
「そんな弱虫はな、一生地を這って生きてりゃいいんだよ」
別れしな、ミドラーはそう吐き捨てた。
最後の最後まで彼は心なかった。
だがそれによって私は決意する。
絶対に強くなってやる、そして彼を見返す、そんな風に心を決めた。
彼ともう一度婚約したいとは思わないけれど。
でも、私は、弱虫と罵られてこんなところで終わってはいられない!
その日から私の人生は大幅に方向転換。
私は最強の剣士を目指すことにした。
戦う力を身につけ、冒険者として働こう。そう考えたのである。
◆
ある女性剣士に弟子入りした私は鍛えてもらう中で魔法の際を開花させた。それは想定外のことだったけれど。でも、師匠から教わった剣術と魔法を組み合わせることで、より強い戦闘スタイルを築き上げることができて。二つの刃を手にした私はあっという間に有名冒険者への道を駆けのぼった。
そうして国内で三位以内に入る最強冒険者となった私は、王子フェスフェンよりその才能を認められ求婚される。
「貴女と共に国を護っていきたいと考えているのです。どうか、我がパートナーとなってはくださいませんか?」
そして私は王子フェスフェンの妻となった。
◆
結婚後一年ほどが経ったある日、偶然ミドラーと再会する。
「あの……久しぶり、だな」
「そうですね」
ミドラーはすごく気まずそうな顔をしていた。
恐らく私の現在の状態については知っているのだろう。
「冒険者として最強になったそうじゃないか」
「ええ。貴方には感謝しています。貴方には失礼なことを言われましたけれど、それによってここまで強くなれ、愛する夫……殿下とも巡り会えました」
私は今、あの出来事に感謝している。
あれがあったからこそ今日の私がいる。
そう思うから。
「では、失礼しますね」
その日の晩、王都にて、ミドラーは死亡した。
酔っぱらいたちの宴が途中から暴徒化し、それの危険な行動に巻き込まれてしまい負傷、その傷によって一時間も経たないうちに亡くなってしまったのだそうだ。
彼の最期は呆気ないものだった。
◆終わり◆




