パーティーの最中に婚約破棄宣言してくるというのはさすがにちょっとどうかと思います。
「貴様との婚約、破棄とする!!」
隣国の王子アルグレッサがあるパーティーの最中突如そんなことを言い放ってきた。
「え……」
「聞こえなかったのか? 婚約は破棄とする、と言ったのだ」
「本気で仰っている……のですか?」
「当たり前だろう。なぜそんな嘘をつく必要があるというのか。俺はそんなくだらない嘘はつかない」
アルグレッサは婚約破棄宣言だけでは終わらず。
「貴様は一国の王女のくせに運動が好きなどという野蛮な面を持っているだろう。そこが気に食わない。運動好きの女など、どうしても女として見られないのだ。それに一国の頂に立つ男の妻には相応しくない。王妃は上品かつ可憐な女性でなくては」
周りには私たちの様子を見ている人たちがいるというのに好き放題言ってくる。
「だから貴様はこの位置に相応しくないと判断したのだ」
「そう……ですか」
こうして私とアルグレッサの関係は壊れてしまったのだが――その年の末、我が国に攻め込まれたアルグレッサの国は滅亡した。
もちろん王子であるアルグレッサも落命した。
私はこれからもゆったりと歩んでゆく。
生きていれば理不尽なことに出会うこともある。ただそれでも幸せにはなれるのだと、これから、生きて、生きて、証明してゆきたいと思う。それがきっと未来の希望へと変わるはずだから。
たとえ婚約破棄されようとも、そこですべてが終わるわけではない。
――それが私の描いてゆく道だ。
◆終わり◆




