婚約者がいきなり婚約破棄を告げてきました。〜そういうことならそれでも良いですよ、私は私で幸せな未来を掴みます〜
「お前との婚約だが、破棄とすることにした」
婚約者ロバートから告げられたのはそんな言葉だった。
「え……」
「なぜならお前にはもう飽きたからだ」
その日のロバートはこれまで見たことがないくらい冷ややかな顔をしていて。
「お前とはもう終わりにする」
そんな風に切り捨てられた。
どうして……、と思いつつも、私はただその場から去るしかなかった。
きっともう何を言っても無駄なのだろう。彼には届かないのだろう。そう思うから、もう何も言い返さないことにしておいたのだ。これ以上ややこしいことになるのは嫌だった。
何よりも、とにかく、もう少しでも早く彼の前から去りたかったのだ。
◆
三年が過ぎた。
私はロバートに婚約破棄された後少しして本屋で知り合った青年と親しくなり結婚した。
彼と穏やかな家庭を築いて。
そうやって現在に至っているが、毎日とても楽しく心地よく過ごせている。
彼とは食べ物の好みが似ている。
それゆえ二人での食事の時間はとても楽しいもの。
同じものを美味しいと言い合いながら食せるというのは幸せなことだ。
一方ロバートはというと。
あの後少しして一人の美女から告白され付き合いだしたそうなのだがそれは実は罠で、結果、かなり高額な詐欺に遭ってしまったそう。
それによって心が折れたらしく、そこから体調を崩し、やがて風邪をこじらせ落命してしまったそうだ。
ロバートの最期は呆気ないものだったようである。
過去を引きずって幸福を手放しはしない。
私は進み続ける。
そして良き未来を選び、掴む。
◆終わり◆




