晩餐会にて婚約破棄宣言をされてしまいました。~またここから新しい物語を始めます~
「ローレニア・フィレンド! 貴様のような女は一緒にいても面白くない。よって……婚約は破棄とする!」
この国の王子であり私の婚約者でもあるエイットは晩餐会の最中突然そんな宣言をしてきた。
――お前はもう要らない。
彼は平然とそういった意味のことを述べたのだ。
「え……」
「貴様は不要! 今すぐ俺の前から去れ!」
「そ、それは、一体……どういう意味なのですか? あまりにもいきなり過ぎると思います」
「うるさい!」
「ええっ」
「いいから去れと言っているんだ! 王子たる俺に逆らうのか? 逆らったらどうなるか分かっているのだろうな!? 死刑だぞ!!」
これはもう何を言っても無駄か。
そう判断したので私は彼の前から消えることにした。
晩餐会を最後まで楽しめないのは残念だが、ここまで言われてしまっては仕方がない。
「何あれ、酷くない……?」
「そうよね」
「きっついわぁ」
「馬鹿そうな顔してるけどさ、馬鹿なんじゃないの」
「ローレニア様は心がお広いですわね。わたくし、あんなことをされたなら、絶対に激しく怒ってしまいますわ」
なんて惨めなのだろう。
こんな場所で婚約破棄を言いわたされたうえ去る選択しか与えてもらえないなんて。
……ただ、周囲が私の味方になってくれていたことは救いだった。
もしここで皆からも馬鹿にされ笑われていたとしたら、きっと、もっと心が痛かったと思う。
◆
あの後エイットは以前から噂が出ていた元侍女の女性との婚約を発表。
そういうことか……。
なぜ婚約破棄されたのか。
その答えは思わぬ形で得ることができた。
だがその二人の結婚にあたっては反対派がかなり多くて。
エイットとその女性は国民から多数の暴言を投げつけられ、それによって女性が心を病み――結果、女性は自ら死を選んでしまう。
そして、それによってショックを受けたエイットも健康な心を失うこととなってしまったようで、今は毎晩酷い悪夢にうなされてしまっているらしい。
二人は幸せに結ばれる未来を手に入れられなかった。
ちなみに私はというと。
とても愛しい人との出会いを得られ、今では過去などすっかり忘れて毎日を楽しく暮らせている。
またここから、新しい物語を始めよう。
◆終わり◆




