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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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口臭系勘違い婚約者が面倒臭いです。~意味不明な理由ではありますが、婚約破棄自体は大歓迎です~

 婚約者ミートベルは口臭が凄い。


 何が凄いって、とにかく臭いのだ。


 しかし本人は気づいていない。

 それどころか彼は自身を『素晴らしい男』だと言い、また、純粋にそう思い込んでいる。


 そんな彼は驚くくらいプライドの高い人で。


「ネッタ! 貴様、その顔! 俺を馬鹿にしているのだろう!」

「え……」

「やはりな! そうだと思った。この素晴らしい俺を馬鹿にするなど、万死に値するぞ!」


 また、とてつもなく思い込みが激しい人なので、一度そう思ったことは絶対に変えようとしない。


「待ってください、落ち着いて、違います」

「今さら何を言っても無駄だ!」

「聞いてください」

「貴様のような女の言葉など聞く価値はないッ!!」


 こちらが真実を話そうとしても彼は一切聞く耳を持たない。


 でもこれもいつものことだ。

 だから私はもう慣れている。


 また始まった……、と、内心溜め息をつくだけ。


 だが今日はさらにエスカレートして。


「くだらん女め、婚約破棄してやる!!」


 彼はそこまで言った。


「婚約破棄?」

「ああ! そうだ! 婚約破棄してやる!」

「……唐突過ぎではないですか」

「知るか! そんなことはどうでもいい、貴様に問題があったことが何よりも一番の大問題なのだ!」


 むわっと漂う生臭さ。

 これこそがミートベルの口臭。


「じゃあな。関係はここまでだ。二度と俺の前には現れるなよ! さらばだ」


 こうして思わぬ展開で婚約は破棄となった。



 ◆



 あの突然の婚約破棄から二週間、ミートベルはこの世を去った。


 私との関係を終わらせたミートベルは前々から心を寄せていたという高貴な家柄の女性にアプローチを開始したそうなのだが、口臭が酷いとはっきり言われてしまったうえ悪い点をいくつも並べられ拒絶されてしまったそうなのだ。


 それによってミートベルの心は壊れた。


 彼は女性に拒絶された日の晩、あの世へ旅立った。


 ――そう、自ら死を選んだのである。


 ミートベルの心は私が思っていたよりもずっと弱かったみたいだ。

 何も言わないでいてくれる人に対しては強気でいられるのだろう。だから私に対しても高圧的な態度をとっていられたのだ、恐らく。

 しかし本当のことを言われてしまうと脆く。

 惚れていた人からだったというのもあることはあるのかもしれないが。ただ、面と向かって真実をはっきりと述べられた時、彼の心はそれに耐えられなかったようなのである。



 ◆



 二十三歳になる春、私は結婚式を挙げた。


 伯父の紹介で出会った男性との結婚。

 それは一見形式だけのものと思われてしまいそうなものだが……実際にはそうではない、私たち二人は互いを想い愛し合っている。


 夫となる人のことを、私は、心の底から想っているのだ。


 今、とても幸せ。


 この幸福を忘れない。


 いつまでも。

 そう絶対に。


 愛した人と結ばれることができる幸福を噛み締めながら生きてゆくつもりだ。



◆終わり◆

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