婚約破棄したうえ私の悪いところを大量に言ってくるなんて……貴方はなんて心ない人なのでしょう。
「俺、もうお前とは一緒に生きねぇから。よって、婚約は破棄とする!」
理不尽な宣言。
それはある日突然投げつけられた。
「お前は可愛くない。お前は魅力がない。お前は素敵でない。お前は顔面が神でない。お前は話が面白くない。お前は色気むんむんでない。お前はお茶の淹れ方が素晴らしくない。お前は学力が低くなくてくだらない。お前は愛おしさがない」
婚約者ロンドスは私の悪口を大量に並べ。
「よってお前とは生きないこととした」
永遠の別れを告げてきたのだった。
「え……ちょ、ま、待ってください」
「二度と話さない」
「あの、困りますっ、いきなりすぎて……」
「二度と会わない」
「ええっ……」
「二度と顔を見ない」
その時の彼はまるで何者かに洗脳されているかのようであった。
◆
あれから数年が経ち、私は、広大な領地を持つ家の一人息子であるバロートンという青年と結婚した。
彼の方が三歳年上。けれども彼は私に対して威張ってくるようなことはない。だから彼との関係は良好だ。彼は相手が年下だからと威張ってきたり圧をかけてきたりするような人ではなかった。
どんな時も優しく接してくれて、包み込むような愛情を向けてくれる、そんな彼を私は愛している。
ちなみにロンドスはというと。
あの後――婚約破棄後のことだが――栗拾いに出掛けていて誰かの落とし物と思われるバナナの皮で滑り後頭部を打ってしまい亡くなったそうだ。
◆終わり◆




