裏切り者は穢らわしいのでさよならします。貴方とは生きません。
婚約者アイベーガウはいつも「愛しているよ」とか「君はとても魅力的、惚れるばかりだよ」などと言ってくれていたのだが。
「愛しているよ、リーナ」
「いやぁ~ん! うれすぃ~! やっとぅわぁ~!」
実は他の女にも同じようなことを言っていた。
「だからさ、今日はゆったりと休憩を楽しもうね」
「もっちろぉ~ん! アイベとなら何だってぇ~! うふふぅ、楽しみましょぉねぇ」
しかもその女とは深い仲にまで発展していて。
……ああ、この人はそういう人だったのだな。
彼の本性を知れば、もう、彼を愛することはできなくなって。
ただただ汚い。
そうとしか思えなくなってしまった。
だから私は告げた。
「アイベーガウ、もう貴方とは無理。だから、婚約は破棄とするわ」
彼と生きるのはもう無理なのだ。
「他の女と深い仲にまで発展しているような人と一緒に生きるのは、私、絶対に無理なの」
「えっ……な、な、何の話? 何? 何のこと?」
「とぼけないで!」
「はわうわ?」
「私、知っているのよ! 貴方が他の女にも愛しているとか言っていることも、その女と深い関係であることも! リーナとかいう、彼女のことよ」
するとアイベーガウは大慌てで謝ってきた、けれど。
「ゆ、許して! あれは遊びなんだ! 完全にっ……本気なんかじゃない!」
「だとしても無理よ」
「本当に愛しているのは君だけ!」
「無理よ。生理的に。だって気持ち悪いもの」
「そ、そんなぁ……ひ、ひ、酷いよぉ……」
「酷いのはそちらでしょう。私を裏切って。最低なのは貴方よ」
こうして二人の関係は終わりを迎えた。
アイベーガウからはしっかりと慰謝料を支払ってもらい、私はそれで家族揃ってあちこちへ出掛け様々な美味しいものを食べた。
◆
そして数年という時が流れた。
私はあの後半年くらいして知り合った青年と結婚し、今は幸せに暮らしている。
あんな人に不幸にさせられてたまるか。
私は幸せに生きる。
災難など消し去るほどの輝きで。
ちなみにアイベーガウはというと、婚約破棄されたということで評判が悪くなり社会的に落ちぶれてしまったようだ。
会社はくびになり。
親戚からは悪口を言われ。
そして最終的には病んでしまったようである。
また、なんだかんだで、リーナにも捨てられたみたいだ。
アイベーガウは独りぼっち。
彼を支える者など、どこにもいない。
◆終わり◆




