愛してる、なんて、今さら言われても困ります! ……あなたとはもうお別れです。
婚約者ロバーツはいつも私に対してだけ冷ややかに接してきていた。
だから愛されていないことは知っていた。
ただ形だけの婚約者同士なのだと。
けれども、ある時、彼の心の真実を知ることとなる――そう、彼には、私ではない愛する女性がいたのだ。
そしてその女性とはもう夫婦に近いくらいの関係にまで発展している。
結婚直前にそのことが判明したことによって私の両親は激怒、ロバーツへ婚約は破棄とするということを伝えた。
すると急に慌て始めるロバーツ。
「愛してるのはエーリアさんだけです! 本当の意味では! というより、他の女なんてただの遊びですよ! 僕は、晴れの日も雨の日も、エーリアさんだけを真っ直ぐに愛しています! 分かってください!」
彼は我が両親にそんなことを言い。
「そうだよな!? エーリア! 僕、ずっと君を愛していたよな!? な! なっ? そうだろ!? そうだよな!! 僕が本当に愛しているのはエーリア君だ、知ってるよな! 愛してる! 愛してるよ!」
さらに私にもそんなことを言ってきて。
「いいえ」
ただそれに乗ってあげることはできず。
「ロバーツさんはいつも私を放置していました。そして関わる時にも冷たい態度ばかり取って、あまりにも心なく、酷かったです。他人の心を無視するような行為ばかり繰り返していました」
私は本当のことだけを口にした。
「ですので、私としましても、この婚約は破棄としたいです」
ロバーツは大層焦っていたけれど、もう遅い。
「なっ……う、嘘だろ!?」
「嘘ではありません」
「こら! エーリア! そんなことを言うな! 嘘をつくなっ」
何もかも手遅れだ。
我が心は彼には向いていない。
「いいえ、嘘などついていません」
「嘘だ!!」
「違います」
「ああそうか分かった、お前、他に好きな男でもいるんだな? ああそうだ分かったぞ! そのために僕をはめたんだろう!」
「そんなわけがないじゃないですか」
「嘘つき女め!!」
「……この期に及んでまだ他人を侮辱するのですね。そのような方とは、もうお話しすることはありません」
こうしてロバーツと私の婚約は破棄となった。
◆
婚約破棄の数日後、ロバーツは自ら死を選んだ。
何でも、浮気のことを親に叱られたそう。
それによって彼は絶望。
そのまま死を選択したということのようだ。
……失礼ながら、可哀想ではない。
そもそも彼が過ちを犯したためにこうなったのだ。つまり彼自身が招いたこと。私のせいではないし、私の親のせいでもないければ、彼を叱った彼のご両親のせいでもない。悪いのは彼。悲劇を招いたのも、結局は彼。
◆
あれから数年、私はとても幸せに毎日楽しく生活している。
一年前にオープンしたカフェ。
今では有名店となった。
毎日のようにお客さんが来てくれていて、また、中には週に数回決まって通ってくれているような濃い常連客も発生しているほどだ。
私はこれからもこの道で生きてゆく。
◆終わり◆




