優しい令嬢を馬鹿にしていた婚約者は痛い目に遭うこととなったようです。~婚約破棄した彼を待っていたのは多数の悲劇と地獄でした~
お茶会を開くのが大好きな令嬢ディアナは婚約者ルーフからあまり好かれていなかった。
「ディアナ、お前、またお茶会かよ」
ルーフはたびたびディアナに対してそんな風に声をかけた。
「ええ! ルーフ様もいらっしゃいます?」
ディアナはルーフに心を開いていたのだが。
「いや行かねぇ」
「そうですか?」
「くだらねぇからな、女の遊びは」
それとは真逆、ルーフはディアナのすべてを否定するような行いを続けていた。
「そうでしょうか……。色々な方の話を聞けるというのは有意義なことと思いますけれど」
「くっだらねぇ! だべるだけとか!」
「分かりました。もし参加したくなったらいつでも仰ってくださいね」
それでもディアナはルーフに対して反撃することはなかった。
彼女はいつも穏やかだった。
どれほど傷つけられるようなことを言われても微笑みを絶やさない、それがディアナという女性であった。
そんなある日。
「お前! またお茶会とかくだらねぇことしてんのか!」
ルーフはお茶会に殴り込んだ。
「ええと……今は最中ですので、少し、後にしていただきたいのですが」
参加者が冷ややかな目を向ける中で。
「うるせえ黙れ!」
ルーフは少しの躊躇いもなく大声を出す。
「ディアナ! お前の耳は死んでいる! もういい! お前みたいなやつとの婚約なんざ……破棄してやるッ!!」
こうしてルーフは驚くほど身勝手に婚約を破棄したのだった。
「なにあの人、あり得ない……」
「酷すぎでしょ」
「ディアナ、気にすることないよ。ディアナがおかしいんじゃない、あの人がおかしいんだって」
お茶会参加者は皆ディアナの味方であった。
◆
ルーフとの婚約が破棄となって間もなく、ディアナは大貴族の家の子息アティオスと結婚した。
ディアナのお茶会に定期的に参加していた貴族の女性がいたのだが、アティオスはその人と知り合いであった。
その女性の紹介でディアナとアティオスは顔を合わせたのだ。
で、二人はそこから急速に仲良くなっていって――気づけば自然に結ばれていた。
ある意味、二人が結ばれるというのは、絶対的な運命だったのかもしれない。
神様が決めていた。
だから出会ったし結ばれた。
誰もがそう思うほどに、ディアナとアティオスの関係は特別感のあるものであった。
一方ルーフはというと。
ディアナを捨てたその日から謎の災難にやたらと見舞われるようになった。
ある時は愛犬が死に。
ある時は父親が寝惚けて転倒し頭を打って亡くなり。
また、他にも、親戚の人が続々急死したり母親が賊に襲われて内臓を抜かれたりと多数の悲劇が発生した。
そしてルーフ自身も、ある時馬車に乗っていて事故に遭い身体の一部分を失った。で、そうして倒れていたところを賊集団に誘拐され、死なない程度に最低限の治療は施してもらえたもののそこから奴隷のようにこき使われる日々が始まってしまって。ルーフにはもう人権などというものはなくなった。ルーフはもう奴隷、それも賊の奴隷である。
ルーフが生きているうちに光を見ることは二度とないだろう。
◆終わり◆




