婚約者ロバートがある日突然呼び出してきたのですが、そこで告げられたのは……。
婚約者ロバートがある日突然呼び出してきて告げてくる。
「お前との婚約だが、破棄とすることとした」
ロバートは冷ややかな面持ちでこちらを見てきている。
その表情には優しさも愛も一切ない。
人の温もりなんて少しも存在しないかのような顔をしている、今の彼は。
「婚約破棄、ですか?」
「ああ」
「なぜですか?」
「なぜ? そんなことも分からないのか? 簡単なことだろうに」
ロバートは驚くくらい偉そうだ。
「くだらねぇつまらねぇからだよッ!!」
こうして私たちの関係は終わりを迎えたのだった。
あまりにも唐突な別れ。
けれども悲しさはない。
なぜって、理不尽なことを言われたから。
ただ、言われたことは忘れない。絶対に。憎しみも、怨みも、消すことはしないし捨てることもしない。彼は己のやったことの責任を背負って生きるべきだからだ。
◆
あの一件から一週間、ロバートの訃報が届いた。
彼は友人らと酒を飲んでいたそうだが、異様に盛り上がったこともあって飲みすぎたために宴の途中で体調を崩し、その場で倒れたそうだ。
そしてそのまま帰らぬ人となってしまったらしい。
……ま、もはやどうでもいい話だが。
ただ、ざまぁ、とは思った。
◆
あれから幾つもの季節が過ぎた。
数え切れないくらいの出来事があったけれど、良いことも悪いことも含めて乗り越えて歩み、今に至っている。
けれど総合的にみて悪い人生ではなかったとは思う。
……特に、現在の夫である青年リリーガとの出会いは我が人生において非常に良いものであった。
彼と出会えたからこそ、今がある。
そういう意味では私は幸運な女だった。
◆終わり◆




