あの雨の日、婚約者からいきなり婚約破棄を告げられた私は落ち込みました。しかしその後とても明るい出会いがありまして……?
あの日は雨だった。
……そう、婚約者ルーエンから婚約破棄を告げられた日のことだ。
あの日、朝に突然呼び出されて、彼のもとへ向かったところ――知らない女性を連れたルーエンが待ち構えていて、私の姿を目にするや否や「お前との関係は終わりにする」と言い放ってきたのである。
……そうして私は独りになった。
ルーエンが言うには、私には女性としての魅力がないそうだ。
で、その時連れていた女性には、女性としてかなりの魅力があるのだそう。
そんな風に言われた私はすっかり自信をなくしてしまった。
毎日泣いていた。
毎日辛くて胸が痛かった。
両親に支えてもらいながら何とか生きていくのが限度、というくらい、その時の私の精神状態は落ちていた。
だが、やがて、状況を一変させる出来事が。
「貴女に魅了されました」
街へ視察に来ていた王子ラルフローレンからそんな想いを告げられたのだ。
なんてことのない、平凡な午後だった。
「え……っと、あの、それは……?」
「貴女の姿を見た瞬間落雷に遭ったかのように、この心は奪われてしまったのです」
「人違いではないですか……?」
「いいえ! 人違いなど、ありえません! わたしは貴女に惚れたのです。もう、絶対に、離れられません!!」
えええーっ、と、少し引き気味に思いつつも。
「あ、いや、失礼しました。急に大きな声を。失礼でしたね」
「いえ……」
「ですが人違いではないのですよ」
「そう……なのですか?」
「ええ、そうです」
想いを告げてもらえることには嬉しさもあって。
「ありがたいお言葉、光栄です」
「で、ではっ……!」
「え」
「わたしの妻となってくださいますか!?」
「ええっ」
「……お嫌でしたか?」
「そうでは……ない、ですけど」
そうしてまた始まってゆく。
新しい道、物語が。
◆
私はあれからも凄まじい熱量で迫られその果てにラルフローレンと結婚、まさかの展開だが王子の妻となった。
王城ではとても大事にしてもらえている。
今はまだ慣れないこともあるが楽しく充実した日々を歩むことができているのだ。
一方ルーエンはというと、反政府運動に参加していて味方が投げた火炎瓶を頭に受け死亡した。
◆終わり◆




