婚約者にキモいとか何とかボロクソに言われ捨てられてしまいました。〜舞い娘として生きてゆくと決めました!〜
私はこの村において歴史ある役職である舞い娘の家系に生まれた。
だから自然なこととして幼い頃から舞いを学び日々技術を高めていた。
すべては村のために。
――そう、それこそが、この家に生まれた女の宿命であり定め。
「あーっ、よいしょらほっほっ! よいしょれほいっと! よいしょらよいしょらほいほいはぁーっとせい! せい! あーっと、はぁーっと、せいせいせいとらしょっこらしょっこれはいはいはいはいはーっとらせい! せいっ!」
だから私は舞ってきた。
ずっとずっと。
常に己の芸を磨き生きてきた。
……だが。
「お前、舞いキモすぎだろ」
婚約者であった一つ年上の彼ロマンテッツからある日突然そんなことを言われてしまい。
「無理だわ。生理的に。……てことで、婚約は破棄な」
関係を一方的に叩き壊されてしまった。
「え……」
「もう終わりってことだよ」
「そんな……ど、どうして……!?」
「言ったろ! キモいんだよ! 舞い娘とか! そもそも何なんだよその意味不明文化!」
しかも私のアイデンティティである舞い娘のことまで悪く言われて。
「理解不能なんだよ、そんな文化! そもそも、女が舞ったところで何になんだよ! 全員アホか? そんなことで村が良くなるわけねーだろが! 伝統だから、とかも、くっだらねぇ! キッモ!」
その言葉があまりにも心なく酷いものだったから。
「非現実的過ぎ! アホ過ぎ! キッモキッモキーモーッイキーモーッイキモキモキモキモキモキモキモキモキモキモキモキモキモスギッ!! ……て感じだな。あー、吐きそ。舞い娘とか、キモッ!! 変な文化うぜぇキメェ、あーあー、またまた吐き気がしてきた。キメェキメェキモスギィッ、ゲボゲボゲボゲボゲボゲボゲーボッて感じだわ、ないわー」
……この人は許せない、絶対に。
内心そんなことを思ってしまった。
◆
「あーっと、れい! ほい! あーはああぁぁぁぁっと、ほい! あーっ、よいしょらほっほっ! よいしょれほいっと! よいしょらよいしょらほいほいはぁーっとせい! とらしょ、ほい、ほい! せい! あーっと、はぁーっと、せいせいせいとらしょっこらしょっこれはいはいはいはいはーっとらせい! せいっ!」
婚約破棄されてから、私は、より一層舞いに熱心に打ち込むようになった。
「はい! はい! はいっはいっはいっはいっはあああぁぁぁぁぁぁぁいいぃぃーっ、はい! せい! とら! しょ! っこら、はいとらしょいとれはいとらしょいとれはいとらしょいとれるるれるろいろるるるれしょらふらるろいろる、せい! はいっ! はああああああーっ、とりゃせいっ!」
私は村のために生きる。
この村に暮らす人々の幸福のために。
もう覚悟は決めている。
「らいらいらああぁぁぁぁいらいらいらいらいらああぁぁぁぁぁぁんはああああああせぇぇぇぇぇぇとぅぅぅううぅぅぅらあああああっとれはああぁぁぁぁぁぁぁんぅうううせええぇぇぇぇいぃぃっとらしょっこらしょっこらしょっこらしょっこら」
たとえ馬鹿にされても、それでも構わない。
「あーっ、よいしょらほっほっ! よいしょれほいっと! よいしょらよいしょらほいほいはぁーっとせい! せい! どっせい、どっせい、いっくぜ、はいはい! どっせいどっせいはいほらほらしょこ! あーっと、はぁーっと、せいせいせいとらしょっこらしょっこれはいはいはいはいはーっとらせい! せいっ!あーっ、よいしょらほっほっ! よいしょれほいっと! よいしょらよいしょらほいほいはぁーっとせい! せい! あーっと、はぁーっと、せいせいせいとらしょっこらしょっこれはいーっ、せいとりゃっ? はいはいはいはーっとらせい! せいとりゃ? せいとりゃっ? ……ああああああああ、いいいいーっ、せいっ!」
◆
あれから十年。
もう数年前のことにはなるが、かつて婚約者であったロマンテッツは家の裏庭に落ちてきた巨大な岩に激突され落命した。
彼の最期は呆気なかった。
そう、彼の人生には、笑っていられる未来も明るい未来もなかったのである。
一方私はというと、村人に日々感謝され尊敬されるような偉大なる舞い娘となることができた。
◆終わり◆




