「君との婚約だが、破棄とすることにしたよ」と婚約者からいきなり言われてしまいました。〜幸せを掴むのはどちらでしょうか〜
「君との婚約だが、破棄とすることにしたよ」
なんてことのない平凡なある日、婚約者リゼールが突然そんなことを言ってきた。
「婚約破棄、ですか?」
「ああそうだよ」
「どうしてですか?」
「飽きたから、理由はそれだけだよ」
「ええっ……」
婚約破棄の理由が飽きたからだなんて。
そんなことあり得るのだろうか?
そんなこと許されるのだろうか?
そんな子どもじみた理由……。
とはいえ、彼がここまではっきりとそう言っているのだから、それがすべてなのだろう。
そして恐らく、私がここで何を言っても無駄なのだろう。
彼の心は変わらない。変えられない。それは間違いのないことだと本能的に感じる。
何を言ってももう手遅れなのだ。
彼の心を取り戻すには遅すぎる。
「じゃあな、ばいばい」
こうして私はリゼールに捨てられたのだった……。
◆
婚約破棄されてから、私は、農業に打ち込むようになった。
農業との出会いは親戚の人からのお誘い。
最初はそれほどやる気はなかったのだけれど、いざ踏み込んでみると非常に奥深い世界で、そこからどんどん好きになっていった。
そうしてやがて私は農業界を率いるほどの立場にまで出世してゆき――後に農業大国の王子である青年との良縁に恵まれた。
一方リゼールはというと、あれから少しして怪しい女に迫られうっかり一線を超えてしまい既成事実を作られてしまったためにその女と結婚しなくてはならなくなったうえ結婚後も奴隷のような扱いを受けることとなってしまっているそうだ。
◆終わり◆




